尊属殺重罰規定違憲判決
尊属殺の法定刑を死刑・無期懲役に限る刑法200条は、加重の程度が極端で、憲法14条1項に違反するとした判決
出題:司法H22・司法H26・司法R3・司法R7・予備H27・予備R3・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和45(あ)1310 尊属殺人
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 刑集 第27巻3号265頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,刑法199条,刑法200条
解説
事案
被告人は、少女のころに実父から破倫の行為を受けた。以後10余年間、実父と夫婦同様の生活を強いられ、その間に数人の子をもうけるという悲惨な境遇にあった。本件の直前、被告人は正常な結婚の機会にめぐりあったが、実父はこれを嫌い、被告人をあくまで自己の支配下に置こうとした。被告人は旬日余にわたり脅迫・虐待を受けて懊悩煩悶の極にあり、いわれのない実父の暴言に触発されて実父を殺害し、犯行後ただちに自首した。行為は心神耗弱の状態でなされた。原審(東京高裁)は、刑法200条(尊属殺)を合憲として適用した。弁護人は、同条が憲法14条に違反し無効であるとして上告した。
争点
- 刑法199条とは別に、尊属殺を加重処罰する刑法200条を置くことは、憲法14条1項の差別的取扱いにあたるか
- 尊属殺を加重処罰するという立法目的に合理的根拠があるか
- 法定刑を死刑・無期懲役に限る加重の程度が、目的達成の手段として合理的か
判旨
結論:刑法200条は憲法14条1項に違反して無効であり、尊属殺にも刑法199条を適用するほかない。従来の合憲判例は変更する。原判決を破棄自判し、被告人を懲役2年6月、執行猶予3年に処した。
規範
- 憲法14条1項は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでないかぎり、差別的取扱いを禁止する。同項後段の列挙事項は例示である。
- 尊属殺という加重的身分犯を設けることは、同項の差別的取扱いにあたる。
- 立法目的(尊属に対する尊重報恩という自然的情愛ないし普遍的倫理の維持)は合理的である。被害者が尊属であることを類型化して刑の加重要件とすること自体は、ただちに違憲ではない。
- しかし、加重の程度が極端で、目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理であり違憲となる。
- 刑法200条は、法定刑を死刑・無期懲役に限る点で、立法目的達成に必要な限度を遥かに超える。
判決文から
「この平等の要請は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでないかぎり、差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべき」
14条1項の一般的審査枠組み(昭和39年判決の引用)
「尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義というべく、このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するものといわなければならない。」
立法目的の合理性を肯定した部分
「加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず」
手段審査の規範。答案でそのまま使える
「いかに酌量すべき情状があろうとも法律上刑の執行を猶予することはできない」
手段の不合理性を示す具体的根拠
「刑法二〇〇条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限つている点において、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する刑法一九九条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ」
違憲の結論。違憲とされたのは法定刑の限定という点
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