全農林警職法事件
非現業国家公務員の争議行為の一律禁止と、そのあおり行為等の処罰を、限定解釈なしに合憲とし、仙台全司法事件判決を変更した。
出題:司法H23・司法H28・司法H29・司法H30・司法R5・司法R7・司法R8・予備H28・予備R4・予備R5・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和43(あ)2780 国家公務員法違反
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第27巻4号547頁
- 参照法条
- 国家公務員法98条,国家公務員法110条1項17号,国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)98条5項,国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)110条1項17号,憲法18条,憲法21条,憲法28条,憲法31条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項、一一〇条一項一七号の合憲性 二、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)一一〇条一項一七号にいう「あおり」および「企て」の意義 三、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項、一一〇条一項一七号の法意 四、政治的目的のための争議行為と憲法二八条
裁判要旨
一 国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項、一一〇条一項一七号は憲法二八条に、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)一一〇条一項一七号は憲法一八条、二一条、三一条に違反しない。 二 国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)一一〇条一項一七号にいう「あおり」とは、同法九八条五項前段に規定する違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、または、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいい、「企て」とは、右違法行為を共謀し、そそのかし、または、あおる行為の遂行を計画準備することであつて、違法行為発生の危険性が具体的に生じたと認めうる状態に達したものをいう。 三 国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条五項、一一〇条一項一七号は、公務員の争議行為のうち同法によつて違法とされるものとされないものとを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科さるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして争議行為自体と同一視し、これを刑事制裁の対象から除くものとする趣旨ではない。 四 私企業の労働者であると、公務員を含むその他の勤労者であるとを問わず、使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係のない警察官職務執行法の改正に対する反対のような政治的目的のために争議行為を行なうことは、憲法二八条とは無関係なものである。
解説
事案
被告人らは、農林省職員で組織するB労働組合の役員である。昭和33年10月8日、内閣が警察官職務執行法(警職法)改正案を衆議院に提出した。これに反対する第四次統一行動の一環として、被告人らは組合幹部多数と共謀し、次の行為をした。
- (1) 各県本部等あてに「所属長の承認がなくても11月5日は正午出勤の行動に入れ」との趣旨の電報指令・文書指令を発出・発送させた。
- (2) 11月5日午前9時ころから11時40分ころまで、農林省庁舎の各入口にピケットを張り、正面玄関の扉を旗竿で縛りつけるなどした。そのうえで職員約2500名を入庁させないようにしむけ、勤務時間内に開かれる「警職法改悪反対」職場大会(参加2000名余)に参加するよう反覆して説得・慫慂した。
原判決は、(1)を争議行為のあおりの「企て」、(2)を「あおり」にあたるとし、改正前国公法98条5項・110条1項17号を適用して有罪とした。被告人らが上告した。
争点
- 非現業国家公務員の争議行為を一律に禁止する国公法98条5項は憲法28条に違反するか
- 争議行為のあおり行為等を処罰する国公法110条1項17号は憲法18条・21条・28条・31条に違反するか
- 同号の「あおり」「企て」の意義と、構成要件の明確性
- 争議行為・あおり行為の違法性の強弱による限定解釈(D事件判決の立場)は維持されるか
- 政治的目的のための争議行為は憲法28条の保障を受けるか
判旨
上告棄却(有罪維持)。
- 28条の保障は公務員にも及ぶ。ただし労働基本権は勤労者の経済的地位向上の手段であって絶対的なものではなく、国民全体の共同利益の見地からの制約を免れない(13条の「公共の福祉」)。
- 公務員の地位の特殊性と職務の公共性を根拠に、必要やむをえない限度の制限を加えることには合理的理由がある。そのうえで、①職務の公共性、②勤務条件が法律・予算で定められること(勤務条件法定主義)、③身分保障、④人事院等の適切な代償措置、を挙げる。これらを踏まえ、98条5項による争議行為・あおり行為等の禁止はやむをえない制約であり、28条に違反しない。
- 110条1項17号は、違法な争議行為の原動力・支柱となる者を処罰するもので合理性があり、18条・28条・21条・31条に違反しない。
- 「あおり」「企て」の定義は裁判要旨二のとおりで、構成要件は不明確ではない。
- 違法性の強弱で処罰範囲を画する限定解釈や、通常随伴行為を除外する解釈は是認できない。
- 政治目的の争議行為は、私企業労働者か公務員かを問わず、28条の保障とは無関係である。
判決文から
「憲法二八条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶものと解すべきである。」
公務員も28条の勤労者に含まれることを肯定
「公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由があるというべきである。」
制約の根拠と限度(必要やむをえない限度)
「公務員は、労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。」
代償措置論。合憲性の重要な支柱
「勤労者をも含めた国民全体の共同利益の見地からするやむをえない制約というべきであつて、憲法二八条に違反するものではないといわなければならない。」
一律禁止を合憲とする結論部分
「このように不明確な限定解釈は、かえつて犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり、その明確性を要請する憲法三一条に違反する疑いすら存するものといわなければならない。」
D事件判決の限定解釈を否定した理由
「使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係があるとはいえない警職法の改正に対する反対のような政治的目的のために争議行為を行なうがごときは、もともと憲法二八条の保障とは無関係なものというべきである。」
政治ストは28条の保障外
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
