福岡高判昭和47年11月22日
不動産二重売買で、売主に執拗かつ積極的に働きかけた悪意の第二買主に横領罪の共同正犯を認めた裁判例
刑法横領・背任罪共同正犯本試験で 3 問(短答 3・論文 0)
出題:司法H28・司法H30・予備H30
解説
事案
不動産の二重売買の事案である。売主は、ある不動産をすでに第一の買主に売却していた。第二の買主は、この先行する売却の事実を知っていた。それにもかかわらず、第二買主は売主に対して執拗かつ積極的に働きかけ、自分にその不動産を売却させたうえ、登記を得た。
不動産の二重売買では、第一買主への売却後もなお登記名義を有する売主が、第二買主に売却して登記を移転すれば、売主に横領罪が成立するとされている(最判昭和31年6月26日)。本件では、その相手方である第二買主の刑事責任、特に売主の横領について共同正犯が成立するかが問われた。
争点
- 不動産二重売買において、先行売却を知る第二買主に、売主の横領罪の共同正犯(刑法60条)が成立するか
- 第二買主に共同正犯が成立するためには、単なる知情(悪意)で足りるか、それを超える関与が必要か
判旨
第二買主が、先行する売却の事実を知りながら、売主に執拗かつ積極的に働きかけて売却させ、登記を得た場合には、第二買主に横領罪の共同正犯が成立する。
答案に書ける規範は次のとおりである。
- 不動産二重売買の第二買主は、単に売主の背信的行為を知りながら買い受けたにすぎない場合には、横領罪の共犯とならない。
- 売主に積極的に働きかけるなど、売主の横領行為に積極的に加功した場合には、横領罪の共同正犯が成立する。
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