小売市場事件
社会経済政策のための積極的な経済規制には明白性の原則を用い、小売市場の許可規制を合憲とした大法廷判決
出題:司法H22・司法H24・司法H25・司法H26・司法H27・司法H29・司法R1・司法R2・司法R5・司法R8・予備H24・予備H29・予備H30・予備R2・予備R5・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和45(あ)23 小売商業調整特別措置法違反
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第26巻9号586頁
- 参照法条
- 憲法22条1項,憲法14条,憲法25条1項,小売商業調整特別措置法1条,小売商業調整特別措置法3条1項,小売商業調整特別措置法5条,小売商業調整特別措置法22条,小売商業調整特別措置法24条,小売商業調整特別措置法5条1号,同法施行令1条,同法施行令2条,刑訴法405条1号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 個人の経済活動に対し社会経済政策の実施の一手段としてなされる法的規制措置の合憲性 二 個人の経済活動に対する法的規制措置と違憲判断 三 小売商業調整特別措置法三条一項、同法施行令一条、二条所定の小売市場の許可規制の合憲性 四 違憲の主張が上告適法の理由にあたらないとされた事例 五 憲法二五条一項違反の主張が前提を欠くとされた事例
裁判要旨
一 国が、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るため、その社会経済政策の実施の一手段として、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規則措置を講ずることは、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法の禁ずるところではない。 二 個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限つて、これを違憲とすることができる。 三 小売商業調整特別措置法三条一項、同法施行令一条、二条所定の小売市場の許可規制は、憲法二二条一項、一四条に違反しない。 四 小売商業調整特別措置法五条一号に基づく大阪府小売市場許可基準内規(一)は、それ自体、法的拘束力を有するものではなく、単に同法三条一項に基づく許可申請にかかる許可行政の運用基準を定めたものにすぎないから、その当否は、具体的な不許可処分の適否を通じて争えば足り、右許可申請をしない者が右内規の一般的合憲性を争うことは許されない。 五 小売商業調整特別措置法所定の小売市場の許可規制のために、国民の健康で文化的な最低限度の生活に具体的に特段の影響を及ぼしたという事実は、本件記録上もこれを認めることができないから、所論憲法二五条一項違反の主張は、その前提を欠き、上告適法の理由にあたらない。
解説
事案
小売商業調整特別措置法(本法)3条1項は、政令で指定する市の区域内の建物を小売市場(1つの建物で、10以上の小売商の店舗に使われるもの。その全部または一部が政令指定物品を販売する場合に限る)とするために、店舗用に小売商へ貸し付けたり譲り渡したりするには、都道府県知事の許可を要すると定めていた。
- 施行令1条・別表一が対象の市を、施行令2条・別表二が対象の物品(野菜・生鮮魚介類)を指定していた。
- 本法5条は不許可事由を列挙し、22条1号は3条1項違反に罰則を設けていた。
被告人らは本法違反の罪に問われ、原審(大阪高裁)も規制を合憲とした。被告人らは上告し、次のように主張した。
- 許可規制は営業の自由を不当に制限し、憲法22条1項に違反する。
- 本法5条1号に基づく大阪府小売市場許可基準内規(一)も違憲である。
- 指定都市に限ったこと、10店舗未満の市場やスーパーマーケットを除外したことは、憲法14条に違反する。
- 憲法25条1項にも違反する。
なお、記録上、被告人らが許可申請をした形跡はなかった。
争点
- 憲法22条1項は営業の自由を保障するか
- 社会経済政策の一手段として行われる経済活動規制(積極目的規制)の合憲性を、どのような基準で審査するか
- 小売市場の許可規制(本法3条1項、施行令1条・2条)は憲法22条1項・14条に違反するか
- 許可申請をしていない者が、許可基準内規の一般的な合憲性を争えるか
- 憲法25条1項違反の主張は上告適法の理由になるか
判旨
上告棄却(全員一致)。小売市場の許可規制は憲法22条1項・14条に違反しない。
- 営業の自由:憲法22条1項の職業選択の自由は営業の自由を含む。
- 消極的規制:個人の経済活動に対する規制は、自由な経済活動から生じる弊害が社会公共の安全と秩序の維持の見地から看過できない場合に、消極的にその弊害を除去・緩和するため必要かつ合理的な限りで許される。
- 積極的規制:国が国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るため、社会経済政策の一手段として行う規制も、目的達成に必要かつ合理的な範囲にとどまる限り許される。
- 審査基準(明白性の原則):このような規制は立法府の政策的・技術的裁量に委ねられる。裁判所は、立法府が裁量権を逸脱し、規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って違憲とすることができる。
- 内規:大阪府の許可基準内規は法的拘束力のない運用基準にすぎない。その当否は具体的な不許可処分の適否を通じて争えば足り、許可申請をしていない者がその一般的合憲性を争うことは許されない。
- 25条1項:許可規制が最低限度の生活に具体的に特段の影響を及ぼした事実は認められず、違憲の主張は前提を欠く。
判決文から
「個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところ」
経済的自由と精神的自由を区別し、積極規制を許容
「立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができる」
明白性の原則の規範部分
「消極的に、かような弊害を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許されるべきことはいうまでもない。」
消極目的規制の許容性にも言及している
「一般消費者の利益を犠牲にして、小売商に対し積極的に流通市場における独占的利益を付与するためのものでないことが明らかである。」
目的の正当性を認めた当てはめ
「その当否は、具体的な不許可処分の適否を通じて争えば足り」
内規(行政規則)の争い方を示した部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
