立退料増額引換給付判決事件
原告が申し出た立退料300万円を超える500万円との引換えで家屋明渡請求を認容した原審を是認した事例
出題:司法R3・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和41(オ)1005 店舗明渡請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第25巻8号1343頁
- 参照法条
- 借家法1条ノ2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
借家法一条の二に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟において当事者の明示の申立額をこえる立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することを相当と認めた事例
裁判要旨
借家法一条の二に基づく解約を理由として家屋の明渡を求める訴訟において、その正当事由として、右家屋が京都市屈指の繁華街にある店舗でありながら老朽化して建替えを要する等原審認定のような諸事情(原判決理由参照)があるほか、家主がその補強条件として三〇〇万円もしくはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する額の立退料を支払う旨の意思を表明し、これと引換えに家屋の明渡を求めている場合には、五〇〇万円の立退料の支払と引換えに右明渡請求を認容することは相当である。
解説
事案
家主(原告・被上告人)が借家人(被告・上告人)に対し、京都市屈指の繁華街にある店舗の明渡しを求めた。賃貸借は、期間満了前に適法な更新拒絶がなかったため、借家法2条により期間の定めのないものとして更新されていた。家主は訴訟の準備書面で黙示に解約を申し入れ、借家法1条ノ2の解約申入れを原因とする明渡しを主張した。正当事由としては、店舗が繁華街にありながら老朽化して建替えを要すること、敷地の利用計画があることなどが主張された。家主はその補強条件として、立退料300万円、またはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所が決める額を支払う意思を示し、その支払と引換えの明渡しを求めた。原審は、500万円の支払と引換えに明渡請求を認容した。借家人は、立退料が過少であることなどを理由に上告した。
争点
- 借家法2条により法定更新された賃貸借は期間の定めのないものとなるか
- 準備書面による黙示の解約申入れが認められるか
- 立退料の提供は正当事由の判断でどう位置づけられるか。立退料は借家人の損失の全部を補償する額でなければならないか
- 原告の申出額(300万円)を超える立退料(500万円)との引換給付判決をすることができるか(処分権主義・民訴法246条)
判旨
上告棄却。
- 原審が確定した諸事情のもとでは、家主が立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所が決める金員を支払う意思を表明し、その支払と引換えに明渡しを求めていることで、解約申入れは正当事由を備える。
- この場合に500万円の支払と引換えに明渡請求を認容することは相当である(判示事項は「当事者の明示の申立額をこえる立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することを相当と認めた事例」とする)。
- 規範:立退料の提供は、それだけで正当事由の根拠となるものではない。他の諸事情と総合考慮され、相互に補い合って正当事由判断の基礎となる。そのため、立退料が借家人の損失の全部を補償する額である必要はなく、どのように損失を補償するかを具体的に説示する必要もない。
- 付随して、借家法2条で更新された賃貸借は期間の定めのないものとなる。本訴で解約申入れを原因とする主張を維持していることから、準備書面による黙示の解約申入れを認めた原審判断も正当とされた。
判決文から
「被上告人が上告人に対して立退料として三〇〇万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めている」
申出額を超える認容の前提となる原告の意思表明
「右金員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあつて正当事由の判断の基礎となるものである」
立退料は正当事由の補完要素という位置づけ
「右金員が、明渡によつて借家人の被るべき損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はない」
立退料は損失の全部補償である必要がない
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