高知落石事件
国賠法2条1項の瑕疵とは営造物が通常有すべき安全性を欠くことをいい、過失は不要と明示した基本判例
出題:司法H25・司法R4・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和42(オ)921 損害賠償請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第24巻9号1268頁
- 参照法条
- 国家賠償法2条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、国道への落石の事故につき道路の管理にかしがあると認められた事例 二、国家賠償法二条一項に基づく損害賠償責任と過失の要否
裁判要旨
一、国道に面する山地の上方部分が崩壊し、土砂とともに落下した直径約一メートルの岩石が、たまたま該道路を通行していた貨物自動車の運転助手席の上部にあたり、その衝撃により、助手席に乗つていた者が即死した場合において、従来右道路の付近ではしばしば落石や崩土が起き、通行上危険があつたにもかかわらず、道路管理者において、「落石注意」の標識を立てるなどして通行車に対し注意を促したにすぎず、道路に防護柵または防護覆を設置し、危険な山側に金網を張り、あるいは、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石を除去し、崩土のおそれに対しては事前に通行止めをするなどの措置をとらなかつたときは、通行の安全性の確保において欠け、その管理にかしがあつたものというべきである。 二、国家賠償法二条一項による営造物の設置または管理のかしに基づく国および公共団体の損害賠償責任については、過失の存在を必要としない。
解説
事案
一級国道56号線は、高知市方面と中村市方面を結ぶ陸上交通上きわめて重要な道路である。そのうち海岸線沿いの約2000メートルの区間(本件道路)では、従来から山側からしばしば落石があり、崩土も何回か起きていた。通行する人や車は、いつ落石や崩土が起こるかわからない危険に絶えずさらされていた。
それにもかかわらず、道路管理者は「落石注意」等の標識や、赤い布切れを付けた竹竿を立てて注意を促したにすぎなかった。防護柵・防護覆の設置、山側への金網張り、斜面の常時調査による落下しそうな岩石の除去、崩土のおそれがある場合の事前通行止めといった措置はとっていなかった。
こうした中、山地の上方部分が崩壊し、土砂とともに落下した直径約1メートルの岩石が、通行中の貨物自動車の助手席上部に当たり、同乗者が即死した。被害者側が、国(国賠法2条1項)と、管理費用負担者である高知県(同法3条1項)に損害賠償を求めた。原審は請求を認め、国・県が上告した。
争点
- 国家賠償法2条1項の「設置又は管理の瑕疵」の意義
- 国賠法2条1項の責任の成立に、国・公共団体の過失が必要か
- 落石注意の標識設置等にとどまった道路管理に瑕疵が認められるか
- 防護柵設置の費用が多額で予算措置に困ることが免責事由となるか
判旨
上告棄却(国・県の賠償責任を肯定)。
規範
- 国賠法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
- これに基づく国・公共団体の賠償責任は、過失の存在を必要としない。
あてはめ
- 本件道路では落石・崩土がしばしば起きていた。にもかかわらず、管理者は標識で注意を促したにすぎず、防護柵・防護覆の設置、金網張り、斜面調査と岩石除去、事前の通行止め等の措置をとらなかった。
- そのため本件道路は通行の安全性の確保において欠け、管理に瑕疵がある。
最高裁が是認した原審の判断
- 瑕疵の有無は、事故地点に限らず約2000メートルの道路全般の危険状況・管理状況を考慮して決する。
- 防護柵の設置費用が多額で、県が予算措置に困るとしても、それにより直ちに賠償責任を免れるものではない。
- 本件が不可抗力ないし回避可能性のない場合であるとは認められない。
結論
国は国賠法2条1項により、県は管理費用負担者として同法3条1項により、損害賠償責任を負う。
判決文から
「国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。」
瑕疵の定義と無過失責任を示した中核規範
「その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない」
予算不足は直ちに免責事由とならない
「本件における道路管理の瑕疵の有無は、本件事故発生地点だけに局限せず、前記二〇〇〇メートルの本件道路全般についての危険状況および管理状況等を考慮にいれて決するのが相当である」
瑕疵判断の対象範囲を道路全般に広げた点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
