最判昭和45年7月24日
名義人の承諾がない他人名義の不実登記にも94条2項を類推適用し、悪意者からの善意転得者も第三者に当たるとした判例
出題:司法H29・司法R5
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和40(オ)204 所有権確認等請求
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第24巻7号1116頁
- 参照法条
- 民法94条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、不動産の所有者が他人名義を使用して不実の登記を経由した場合における民法九四条二項の類推適用 二、民法九四条二項にいう善意の第三者
裁判要旨
一、不動産の所有者甲が、乙にその所有権を移転する意思がないのに、乙名義を使用して他からの所有権移転登記を受けたときは、右登記について乙の承諾がない場合においても、民法九四条二項を類推適用して、甲は、乙が不動産の所有権を取得しなかつたことをもつて、善意の第三者に対抗することができないものと解すべきである。 二、民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。
解説
事案
Xは自己所有の不動産21筆について、一時的にEに移していた登記名義を回復する際、二男Dの名義を使ってE→Dの所有権移転登記をした。また、Fから買い受けた2筆についても、D名義でF→Dの移転登記をした。いずれもXからDへ所有権を移す合意はなく、Dは登記簿上の仮装名義人にすぎなかった。その後Dは、A2(代理人G)にこれらの不動産を売却し、移転登記をした。Gは、不動産がDの所有でないことを知っていた。
A2はさらに、11筆をA1に、12筆をA3に売却し、それぞれ移転登記をした。XはA1・A3を債務者として、処分禁止・立木伐採搬出禁止の仮処分を執行した。その後、A2との売買は合意解除され、A1・A3の登記は抹消された。
Xは所有権確認等を求めて本訴を提起した。これに対しA1は、合意解除前の仮処分執行が自己の所有権を侵害する不法行為であるとして、損害賠償を求める反訴を提起した。原審は、A2側の悪意を認定しただけで、Xの本訴を認容し、A1の反訴を棄却した。
争点
- 所有者が他人名義で不実の登記をしたが、名義人の承諾がない場合にも民法94条2項を類推適用できるか
- 民法94条2項の「第三者」の意義と、仮装名義人からの転得者が第三者に当たるか
- 直接の取引相手(中間者)が悪意で転得者が善意の場合、転得者は保護されるか
- 仮処分による不法行為を理由とする反訴で、所有権主張の可否を判断する基準時
判旨
結論:本訴に関する上告は棄却した。A1の反訴に関する部分は破棄し、差し戻した。
- 類推適用の規範:不動産の所有者が、他人に所有権を帰属させる意思がないのに、自己の意思に基づいてその他人名義の登記を経由したときは、民法94条2項の類推適用により、所有者は所有権が移転していないことを善意の第三者に対抗できない。これは名義人の承諾がない場合でも、不実の登記の存在が真実の所有者の意思に基づく以上同じである。
- 悪意の対象:「悪意」とは、不動産が登記名義人の所有に属しないことを知っていたことをいう。
- 第三者の規範:94条2項の「第三者」とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいう。仮装の相手方と直接取引した者だけでなく、その者からの転得者も第三者に当たる。類推適用の場合も同じである。
- 中間者が悪意の場合:転得者は、前々主が不実の登記名義人であることを知らなかった限り保護される。中間者(A2)が悪意であっても、この判断は左右されない。
判決文から
「右登記について登記名義人の承諾のない場合においても、不実の登記の存在が真実の所有者の意思に基づくものである以上、右九四条二項の法意に照らし、同条項を類推適用すべきものと解するのが相当である。」
名義人の承諾がなくても類推適用を肯定した核心部分
「けだし、登記名義人の承諾の有無により、真実の所有者の意思に基づいて表示された所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護の程度に差等を設けるべき理由はないからである。」
外形への信頼保護という理由づけ
「虚偽表示の相手方との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた者のみならず、その者からの転得者もまた右条項にいう第三者にあたるものと解するのが相当である。」
転得者も94条2項の第三者に含まれる
「右時点での同上告人に対する関係における所有権帰属の判断は、上告人A2が悪意であつたことによつては左右されないものと解すべきである。」
中間者が悪意でも善意の転得者は保護される
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