最判昭和45年4月2日
役員選任決議の取消訴訟中に選任役員が全員退任し後任が選任されたときは、特別事情がない限り訴えの利益を欠く。
出題:司法R5・予備H30
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和44(オ)1112 株主総会決議取消、株主総会決議無効確認請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第24巻4号223頁
- 参照法条
- 商法247条,民訴法2編1章(訴)
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中に当該役員が退任した場合と訴の利益の有無 二、前項の場合において決議取消の訴がその利益を失わないとされる特別事情
裁判要旨
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当該取締役の在任中の行為について会社の受けた損害を回復することを目的とするものである旨の特別事情が立証されるときは、訴の利益は失われない。
解説
事案
上告人らは、取締役ら役員を選任した株主総会決議について、決議取消しの訴え(当時の商法247条)を提起した。
- 訴訟の係属中に、取消しを求める決議で選任された取締役らは、いずれも任期満了により退任した。
- 原審(福岡高裁)は、訴えの利益が失われたと判断した。
- 上告人は上告理由で、取り消しうる決議で選任された取締役の在任中の行為によって会社が受けた損害を回復するためには、なお決議取消しの利益があると主張した。
最高裁は、この主張を、本件取消しの訴えが会社の利益のためにするものだという趣旨と解した。そのうえで特別事情の有無を検討した。
争点
- 役員選任の株主総会決議取消しの訴えの係属中に、選任された役員が全員任期満了で退任し、後任が選任された場合に、訴えの利益は存続するか
- その場合でも訴えの利益が失われない「特別の事情」とは何か、またその立証責任は誰が負うか
判旨
上告棄却。
規範1(訴えの利益の消滅)
- 形成の訴えは、法定の要件を充たす限り訴えの利益があるのが通常である。
- しかし、その後の事情の変化により利益を欠くに至る場合がある。
- 役員選任決議の取消しの訴えの係属中に、次の経過をたどった場合は、特別の事情のない限り、決議取消しの訴えは実益がなく、訴えの利益を欠くに至る。
- その決議で選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任した。
- その後の株主総会決議で役員が新たに選任された。
- その結果、取消しを求める選任決議に基づく役員がもはや現存しなくなった。
規範2(特別の事情)
- 取消しの訴えが、当該取締役の在任中の行為について会社が受けた損害を回復することを目的とするものであることが立証されれば、訴えの利益は失われない。
本件へのあてはめ
- 上告人は上記の主張をするだけで、本件訴えが会社のためにするものであることについて何らの立証もしていない。
- したがって特別事情は認められず、訴えの利益を欠く。
判決文から
「形成の訴は、法律の規定する要件を充たすかぎり、訴の利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により、その利益を欠くに至る場合がある」
形成の訴えでも事後的に利益が消滅しうるという総論
「取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなつたときは、右の場合に該当するものとして、特別の事情のないかぎり、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至るものと解するを相当とする。」
役員の非現存による訴えの利益消滅という本判決の規範
「株主総会決議取消の訴は、単にその訴を提起した者の個人的利益のためのみのものでなく、会社企業自体の利益のためにするものであるが」
特別事情を会社の利益の観点で捉える根拠
「本件取消の訴が会社のためにすることについて何等の立証をしない以上、本件について特別事情を認めるに由なく」
特別事情は主張だけでは足りず立証を要する
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