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切り違え尋問事件

最大判昭和45年11月25日

偽計で心理的強制を受け虚偽自白が誘発されるおそれがある場合、その自白は任意性に疑いがあり証拠能力がないとした判例

刑事訴訟法自白法則・補強法則証拠能力総論・違法収集証拠人身の自由本試験で 5 問(短答 4・論文 1)

出題:司法R2・予備H24・予備R4・予備R7

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和42(あ)1546 銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反
裁判
判決・破棄差戻
判例集
刑集 第24巻12号1670頁
参照法条
刑訴法1条,刑訴法319条1項,憲法38条2項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

偽計による自白の証拠能力と憲法三八条二項

裁判要旨

偽計によつて被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、偽計によつて獲得された自白はその任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきであり、このような自白を証拠に採用することは、刑訴法三一九条一項、憲法三八条二項に違反する。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、妻Bと共謀して拳銃・実包を所持したとして、銃砲刀剣類所持等取締法違反等で起訴された。警察での取調べでは、Bは自分の一存で拳銃等を買い受けて自宅に隠匿所持したと述べ、被告人も犯行を否認していた。

ところが検察官は、実際にはBが共謀を自供していないのに、被告人に「Bが共謀を自供した」と告げて説得し、被告人に共謀を認めさせた。続いてBに「被告人が共謀を認めている」と告げてBにも共謀を認めさせ、調書を取った。その後、再度被告人に確認して調書を取った(いわゆる切り違え尋問)。

さらに検察官は、被告人を勾留している警察署の警部補に再取調べを指示した。翌日の取調べで、司法警察員に対する自白調書が作成された。また記録上、検察官が「奥さんは自供している。……こんな事で二人共処罰される事はない。男らしく云うたらどうか。」と説得した事実もうかがわれる(原判決の認定事実とは別に、最高裁が指摘したもの)。

第一審はこの司法警察員調書を証拠として有罪とし、原審も任意性を認めてこれを是認した。

争点

  • 偽計を用いた取調べにより得られた自白の証拠能力(刑訴法319条1項の「任意にされたものでない疑のある自白」に当たるか)
  • 不任意の疑いある自白を証拠に採用することと憲法38条2項との関係
  • 偽計による自白の影響下で、後に別の捜査官に対してされた自白の任意性

判旨

結論:原判決を破棄し、大阪高裁に差し戻した(審理不尽、刑訴法411条1号・413条本文)。

規範

  • 捜査手続も憲法の保障下にある刑事手続の一環であり、刑訴法1条の精神に則って適正に行われるべきである。したがって、偽計を用いて被疑者を錯誤に陥れ自白を獲得する尋問方法は厳に避けるべきである。
  • 偽計によって被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、その自白は任意性に疑いがあるものとして証拠能力を否定すべきである。
  • このような自白を証拠に採用することは刑訴法319条1項に違反し、ひいては憲法38条2項にも違反する。

あてはめ

  • 本件では、偽計(切り違え)に加え、共謀を認めれば被告人のみが処罰され妻は処罰を免れるかもしれないと暗示した疑いがある。そのため、心理的強制による虚偽自白誘発のおそれの疑いが濃厚である。
  • そうであれば、検察官に対する自白だけでなく、その影響下で作成された司法警察員に対する自白調書も任意性に疑いがある。

判決文から

「もしも偽計によつて被疑者が心理的強制を受け、その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合には、右の自白はその任意性に疑いがあるものとして、証拠能力を否定すべきであり」

偽計自白の証拠能力を否定する要件そのもの

「このような自白を証拠に採用することは、刑訴法三一九条一項の規定に違反し、ひいては憲法三八条二項にも違反するものといわなければならない。」

319条1項違反を憲法38条2項違反に結びつけた

「前記尋問によつて得られた被告人の検察官に対する自白およびその影響下に作成された司法警察員に対する自白調書は、いずれも任意性に疑いがあるものといわなければならない。」

影響下の後続自白も任意性に疑いありとした

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。