最大判昭和45年10月21日
不法原因給付となる未登記建物の贈与では引渡しが「給付」となり、所有権に基づく返還請求もできず、所有権は受贈者に帰属する
出題:司法H23・司法H29・司法R1・司法R5
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和41(オ)436 建物明渡等請求
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第24巻11号1560頁
- 参照法条
- 民法708条,民法206条,民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、不法の原因により未登記建物を贈与した贈与した場合その引渡は民法七〇八条にいう給付にあたるか 二、所有権に基づく返還請求と民法七〇八条 三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合における右建物の所有権の帰すう 四、建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合における受贈者に対する登記手続請求の許否
裁判要旨
一、不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法七〇八条にいう給付にあたる。 二、建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない。 三、建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。 四、未登記建物の贈与が不法原因給付であつてその所有権が受贈者に帰属した場合において、贈与者が右建物につき所有権保存登記を経由したときは、受贈者が贈与者に対し建物の所有権に基づいて右所有権保存登記の抹消登記手続を請求することは、不動産物権に関する法制の建前からいつて許されるものと解すべきである。
解説
事案
被上告人X(贈与者)は、自ら新築して所有権を取得した建物(本件建物)を、昭和29年8月、妾である上告人Y(受贈者)に贈与し、当時未登記であった本件建物をYに引き渡した。この贈与は、XがYとの不倫関係を継続する目的で、Yに住居を与え、Yの希望する理髪業を営ませるために行ったものである。Yも、Xのこの意図を察知しながら贈与を受けた。
その後Xは、Yらに対する明渡請求訴訟を自己に有利に進めるため、昭和31年11月10日付けでX名義の所有権保存登記を経由した。XはYらに対して建物明渡し等を請求し、Yは反訴として所有権移転登記手続を請求した。
原審は、贈与は公序良俗に反し無効であり、引渡しは不法原因給付に当たると判断した。そのうえで、贈与が有効であることを前提とするYの反訴請求は失当であるとして、これを棄却した。Yが上告した。
争点
- 不法の原因による未登記建物の贈与において、引渡しは民法708条の「給付」に当たるか
- 不法原因給付をした贈与者は、所有権に基づいて目的物の返還を請求できるか
- 公序良俗違反で贈与が無効な場合、目的物の所有権は誰に帰属するか
- 所有権が受贈者に帰属した場合、受贈者は贈与者名義の保存登記の抹消(移転登記)を請求できるか
判旨
破棄自判。Yの反訴請求(所有権移転登記手続)を認容した。
- 給付の意義:未登記建物の贈与では、引渡しによって贈与者の債務の履行が完了する。したがって、引渡しは民法708条本文の「給付」に当たる。
- 所有権の帰属(贈与の効力):贈与が公序良俗(民法90条)に反し無効であれば、所有権は贈与によっては移転しない。物権行為の相対的無因性は否定される。
- 所有権に基づく返還請求の否定:708条により、給付者は不当利得返還請求ができないだけでなく、所有権に基づく返還請求もできない。
- 反射的効果による所有権の帰属:贈与者が返還を請求できなくなった反射的効果として、目的物の所有権は受贈者に帰属する。
- 登記請求:受贈者は所有権に基づき、贈与者の実体に符合しない保存登記の抹消を請求できる。これは不動産物権法制の建前から許される。抹消を得て改めて保存登記をすることに代えて、所有権移転登記手続を求めることも認められる。
判決文から
「本件贈与の目的である建物は未登記のものであつて、その引渡しにより贈与者の債務は履行を完了したものと解されるから」
未登記建物では引渡しが「給付」となる根拠
「本件建物を目的としてなされた被上告人上告人間の右贈与が公序良俗に反し無効である場合には、本件建物の所有権は、右贈与によつては上告人に移転しないものと解すべきである。」
所有権は贈与自体では移転しないと明言
「同条は、みずから反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから」
708条の趣旨(クリーンハンズ)
「給付者は、不当利得に基づく返還請求をすることが許されないばかりでなく、目的物の所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することも許されない筋合であるというべきである。」
708条が所有権に基づく返還請求にも及ぶ
「その反射的効果として、目的物の所有権は贈与者の手を離れて受贈者に帰属するにいたつたものと解するのが、最も事柄の実質に適合し、かつ、法律関係を明確ならしめる所以と考えられるからである。」
反射的効果による所有権帰属とその理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
