最判昭和44年12月2日
民法203条ただし書は、占有回収の訴えで勝訴し現実に占有を回復した場合に限り、その間の占有継続を擬制する趣旨とした判例
出題:司法H26・司法R4・司法R6・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和42(オ)301 占有回収請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第23巻12号2343頁
- 参照法条
- 民法203条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
民法二〇三条但書の趣旨
裁判要旨
民法二〇三条但書は、占有を奪われた者が、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復した場合に、占有の継続を擬制する趣旨と解するのが相当である。
解説
事案
占有を奪われたとする上告人が、侵奪者とされる被上告人B7のほか、B8、D、B1ら6名を相手に、占有回収の訴えとして損害賠償請求等を提起し、あわせて確認請求もした。
上告人は、民法203条はいわゆる擬制的占有権(物権)を認めて占有者を保護したものだと主張した。そのうえで、占有回収の訴えで請求できる損害賠償は擬制的占有権の侵害による損害の賠償であって、普通の債権ではないと主張した。
原審の判断は次のとおりである。
- 確認請求は過去の権利関係の確認を求めるものに帰し、確認の利益がないとして却下した。
- B1ら6名に対する損害賠償請求は、擬制的占有権を否定して排斥した。
- B7、B8およびDに対する損害賠償請求は、B7の侵奪の時から1年の出訴期間(民法201条3項)を経過した後の提起であるとして排斥した。
上告人が上告した。
争点
- 民法203条ただし書の趣旨(占有回収の訴えの提起だけで占有権は消滅しないのか、勝訴・現実の占有回復を要するのか)
- 所持喪失後も存続する「擬制的占有権」が認められるか
- 占有回収の訴えによる損害賠償請求にも民法201条3項の1年の出訴期間が適用されるか
判旨
上告棄却。
- 民法203条本文により、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによって消滅する。
- 同条ただし書は、占有者が占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、現実に占有しなかった間も占有を失わず、占有が継続していたものと擬制する趣旨である。
- したがって、所持を失った後も存続する独立の「擬制的占有権」は認められない。
- 占有回収の訴えによる損害賠償請求(民法200条1項)も、侵奪の時から1年内に提起しなければならない(民法201条3項)。これを経過した請求は失当である。
- 確認請求は過去の権利関係の確認に帰し、確認の利益を欠くから不適法である。
答案用の規範:「占有権は所持の喪失により消滅する(203条本文)が、占有回収の訴えを提起して勝訴し、現実に占有を回復したときは、その間も占有が継続していたものと擬制される(同条ただし書)」。
判決文から
「民法二〇三条本文によれば、占有権は占有者が占有物の所持を失うことによつて消滅するのであり」
所持喪失による占有権消滅という原則の確認
「占有者は、同条但書により、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復したときは、右現実に占有しなかつた間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である」
ただし書の要件(勝訴+現実回復)と効果(継続擬制)
「同法二〇一条三項によれば、右の訴は侵奪の時から一年内に提起すべきものと明定されているのであるから」
損害賠償請求にも1年の出訴期間が及ぶ
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