最判昭和43年9月26日
物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用でき、その債権者は無資力要件の下で債務者に代位してこれを援用できるとした判例
出題:司法H23・司法H27・司法R3・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和41(オ)77 配当異議
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第22巻9号2002頁
- 参照法条
- 民法145条,民法372条,民法351条,民法423条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用することができるか 二、債権者はその債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができるか
裁判要旨
一、他人の債務のために自己の所有物件に抵当権を設定した者は、右債務の消滅時効を援用することができる。 二、債権者は、自己の債権を保全するに必要な限度で、債務者に代位して、他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる。
解説
事案
訴外E会社は被上告人に対し105万3601円の債務を負っていた。訴外Dは、この債務のために自己所有の本件不動産に抵当権を設定し、物上保証人となった。被上告人の訴外会社に対する債権は、遅くとも昭和34年1月23日の経過により消滅時効が完成していた。
上告人はDに対し、元金30万円と元金100万円の2口の債権およびその遅延損害金債権を持っていた。配当異議訴訟において、上告人は、Dの債権者として、Dが被上告人に対して行使できる時効援用権(訴外会社の被上告人に対する債務の消滅時効の援用権)をDに代位して行使すると主張した。
原審は、物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用できないとして、この主張を退けた。上告人が上告した。
争点
- 物上保証人は、民法145条の「当事者」として被担保債権の消滅時効を援用できるか
- 債権者は、債務者に代位して(民法423条)、債務者が他の債権者に負う債務(または物上保証の被担保債権)の消滅時効を援用できるか
判旨
原判決破棄・差戻し。
- 援用権者の範囲:消滅時効を援用できるのは、権利の時効消滅によって直接利益を受ける者に限られる。物上保証人も被担保債権の消滅によって直接利益を受ける者にあたるから、民法145条の当事者として被担保債権の消滅時効を援用できる。
- 援用権の代位行使:金銭債権の債権者は、債務者が消滅時効を援用できる地位にあるのに援用しないとき、債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるのに十分でない事情にある限り、その債権を保全するに必要な限度で、民法423条1項本文により債務者に代位して消滅時効を援用できる。対象となるのは、債務者が他の債権者に負う債務、または債務者が物上保証人となっている場合の被担保債権である。
- 本件では、Dの弁済資力の程度(無資力要件)についてさらに審理が必要であるとして、原審に差し戻した。
判決文から
「消滅時効を援用しうる者は、権利の時効消滅によつて直接利益を受ける者に限られるが、他人の債務のために自己の所有物件につき抵当権を設定したいわゆる物上保証人もまた被担保債権の消滅によつて直接利益を受ける者というを妨げない」
直接受益者基準と物上保証人の援用権肯定
「債務者の資力が自己の債権の弁済を受けるについて十分でない事情にあるかぎり、その債権を保全するに必要な限度で、民法四二三条一項本文の規定により、債務者に代位して他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することが許される」
無資力要件と必要な限度で援用権の代位を肯定
「消滅時効の援用は専ら援用権者の意思に繋らしめられているからには、債権者が債務者の有する消滅時効援用権を代位行使するがごときは許されないものと考える。」
反対意見:援用権は行使上の一身専属権とみる
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