最判昭和43年8月2日
未登記の先行買主の存在を知り、高値で売りつける目的で買い受けて登記した者は、背信的悪意者として民法177条の第三者に当たらない。
出題:司法H30・司法R4
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和42(オ)564 所有権確認請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第22巻8号1571頁
- 参照法条
- 民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
登記の欠缺を主張することができないいわゆる背信的悪意者にあたるとされた事例
裁判要旨
甲が乙から山林を買い受けて二三年余の間これを占有している事実を知つている丙が、甲の所有権取得登記がされていないのに乗じ、甲に高値で売りつけて利益を得る目的をもつて、右山林を乙から買い受けてその旨の登記を経た等判示の事情がある場合には、丙はいわゆる背信的悪意者として、甲の所有権取得について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらない。
解説
事案
- 被上告人は昭和4年、Dから本件山林3筆を買い受けて所有権を取得し、以後占有していたが、登記をしていなかった。
- 上告人は昭和28年ころ、本件山林の時価を約120万円と見ていながら、Dから代金3万5000円(後にさらに15万円を支払)で買い受け、上告人または第一審脱退原告の名義で所有権移転登記をした。
- 買受当時、Dは山林の所在位置を正確に知らず、すでに売却済みかどうかもはっきりしなかった。一方、上告人は村図等を調べ、本件山林が被上告人の永年占有管理する地域内にあり、被上告人がすでに買い受けていることを知っていた。そのうえで、被上告人が未登記であるのに乗じ、被上告人に高値で売りつけて利益を得る目的で買い受けた。
- 買受後、上告人は被上告人に買取りを求めたが拒絶された。そこで第一審脱退原告に転売し、同原告が本件訴えを提起したことを知ると、山林を買い戻して所有権を主張し、訴訟に参加した。
- 原審は、被上告人は登記なくして所有権取得を上告人に対抗できると判断した。
争点
- 先行する物権変動を知る者(悪意者)のうち、どのような者が民法177条の「第三者」から除外されるか
- 本件の上告人は背信的悪意者に当たるか
- 買受当時の山林の客観的価格が確定されていないことは、背信性の認定の妨げとなるか
判旨
上告棄却(被上告人は登記なくして所有権取得を上告人に対抗できる)。
規範:実体上物権変動があった事実を知る者が、その物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情がある場合、その者は背信的悪意者である。背信的悪意者は登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないから、民法177条の「第三者」に当たらない。
あてはめ:上告人は次の事情のもとで買い受けた。
- 被上告人の永年の占有管理と先行買受けを知っていた。
- 未登記に乗じ、高値で売りつけて利益を得る目的があった。
- 自ら時価を約120万円と評価しながら、代金3万5000円(後にさらに15万円を支払)で買い受けた。
この事情からすれば、上告人が登記の欠缺を主張することは信義に反する。上告人は正当な利益を有する第三者に当たらない。買受当時の客観的価格が確定されていないことは、この結論の妨げにならない。
判決文から
「実体上物権変動があつた事実を知る者において右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には」
悪意に加えて信義則違反の事情を要求する点
「かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであつて、民法一七七条にいう第三者に当らないものと解すべき」
正当な利益を欠くから第三者から除外する構造
「なお、上告人が本件山林を買い受けた当時におけるその客観的価格が確定されていないことは、前記事実関係のもとにおいて右のように解することの妨げとなるものではないというべきである。」
背信性は事情の総合で判断し価格確定は不要
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
