河川附近地制限令事件
補償規定のない財産権制限法令も直ちに違憲無効ではなく、憲法29条3項を直接の根拠に補償請求する余地があるとした判例
出題:司法H23・司法R3・司法R7・予備H29・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和37(あ)2922 河川附近地制限令違反
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第22巻12号1402頁
- 参照法条
- 憲法29条3項,河川附近地制限令4条,河川附近地制限令10条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 河川附近地制限令第四条第二号第一〇条と憲法第二九条 二 憲法第二九条第三項の意義
裁判要旨
一 河川附近地制限令第四条第二号、第一〇条は、憲法第二九条第三項に違反しない。 二 財産上の犠牲が単に一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法第二九条第三項を根拠にして、補償請求をする余地がないではない。
解説
事案
被告人は、名取川の堤外民有地の各所有者に賃借料を支払い、労務者を雇い入れて、従来から同所で砂利を採取してきた。ところが、昭和34年12月11日の宮城県告示第643号により、その地域が河川附近地に指定された。これにより、河川附近地制限令4条2号に基づき、知事の許可を受けなければ砂利を採取できなくなった。被告人は許可を受けずに砂利を採取し、同令10条の罰則違反で起訴された。原審(仙台高裁)は有罪とし、仮に被告人に損失があっても補償は要しないと説示した。
被告人は上告し、次の点を主張した。
- 同令4条2号は特定人に特別の財産上の犠牲を強いるのに補償規定を欠き、罰則(10条)だけを定めているから、憲法29条3項に違反し無効である。
- 本件指定告示は知事の裁量を逸脱し、憲法29条3項に違反する。
- 同令4条2号・10条は憲法73条6号・98条1項に違反する。
争点
- 損失補償規定を欠く河川附近地制限令4条2号・10条は憲法29条3項に違反し無効か
- 法令に補償規定がない場合に、憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求できるか
- 河川附近地の指定の範囲は知事の裁量に属するか
- 同令4条・10条は法律の委任に基づく有効な定めか(憲法73条6号・98条1項)
判旨
上告棄却(有罪維持)。裁判官全員一致である。
- 一般的制限は補償不要:同令4条2号の制限は、河川管理上支障のある事態を事前に防止するため、所定の行為に知事の許可を要するとするにすぎない。これは公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則として何人も受忍すべきものである。したがって補償を要件とせず、補償規定がなくても憲法29条3項に違反しない。
- 特別の犠牲と直接請求:財産上の犠牲が、一般的に当然に受忍すべき制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合には、補償規定がなくても、損失を具体的に主張立証して、直接憲法29条3項を根拠に補償請求をする余地がある。
- 結論:補償規定を欠くことから直ちに当該規定が違憲無効となるのではない。違憲を口実に許可なく砂利を採取した被告人の刑責は肯定される。
- その他:指定の範囲は知事の裁量に属し、本件指定が裁量を著しく逸脱したとはいえない。同令4条・10条は河川法上の根拠(改正前58条、改正後47条・58条の5)に基づく有効な定めである。
判決文から
「この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。」
一般的制限は受忍限度内で補償不要とする基準
「単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく」
特別の犠牲の有無を補償要否の基準とした
「同令四条二号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといつて、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず」
補償規定の欠如=補償否定ではないとする解釈
「本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない」
29条3項に基づく直接請求の可能性を認めた核心部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
