最決昭和43年1月18日
風評の形で名誉毀損事実を摘示した場合、刑法230条の2の真実性証明の対象は風評の存在ではなく、風評の内容である事実である。
出題:司法R2・予備R2
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和42(あ)361 名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第22巻1号7頁
- 参照法条
- 刑法230条ノ2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
人の噂であるという表現を用いて名誉を毀損した場合と刑法第二三〇条ノ二にいわゆる事実の証明の対象
裁判要旨
「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合において、刑法第二三〇条ノ二所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものの存在ではなく、その風評の内容たる事実が真実であることと解すべきである。
解説
事案
被告人は、名誉毀損、私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使の罪で起訴された。名誉毀損の点では、被告人が「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて、公務員の名誉を毀損する事実を摘示したことが問題となった。
原審(東京高裁)は、このような風評の形で事実を摘示した場合、刑法230条の2による事実の証明の対象は、風評が存在すること自体ではなく、風評の内容となっている事実の真否であると判断した。
弁護人は判例違反等を主張して上告した。最高裁第一小法廷は、引用された判例は事案を異にし、その余は単なる法令違反・事実誤認の主張であるとして、適法な上告理由に当たらないとした。そのうえで括弧書きにより原判断を相当と是認し、上告を棄却した(裁判官全員一致)。
争点
- 「人の噂であるから真偽は別として」という風評の形で名誉毀損事実を摘示した場合、刑法230条の2の「真実であることの証明」の対象は何か(風評の存在か、風評の内容たる事実か)
判旨
上告棄却。
結論:「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合、刑法230条の2所定の事実の証明の対象は、次のとおりである。
- 風評そのものが存在することではない。
- その風評の内容たる事実の真否である。
答案用の規範:風評・伝聞の形で事実を摘示した場合でも、刑法230条の2にいう「真実であることの証明」の対象は、風評が存在すること自体ではなく、風評の内容である事実が真実であることである。
したがって、「そういう噂が実際にあった」ことを証明しても、免責されない。
判決文から
「「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて、公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合」
風評形式による摘示という事案の特定
「刑法二三〇条ノ二所定の事実の証明の対象となるのは、風評そのものが存在することではなく、その風評の内容たる事実の真否であるとした原判断は、相当である。」
証明対象は風評の内容たる事実とする核心部分
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