最判昭和42年9月28日
他の株主への招集手続の瑕疵でも決議取消しの訴えを提起でき、取消しが不適当なら裁量棄却を要すると判示した
出題:司法H29・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和41(オ)664 株主総会決議取消請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第21巻7号1970頁
- 参照法条
- 商法247条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 株主は他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起できるか 二 株主総会の決議を取り消すことが不適当な場合と請求棄却の要否
裁判要旨
一 株主は、他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができる。 二 決議取消の訴において取消事由がある場合でも、諸般の事情を斟酌して、その取消を不適当と認めるときは、裁判所は請求を棄却することを要求する。
解説
事案
上告会社Yの記名株式を、被上告人XとEらが、譲渡人の捺印はあるが記名のない裏書によって譲り受けた。Xらは名義書換を請求し、Yは株券を預かった。しかしYは、代表取締役DとX・Eらとの紛争でDを有利にするため、名義書換をせず株券も返さず、Xらが記名を補充することを妨げた。Xは名義書換停止期間の前(昭和33年2月28日)に書換請求をしていた。
Yは、株主名簿に記載のないEらに招集通知を出さずに株主総会を開き、決議をした。Xは、Eら他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由に決議取消しの訴えを提起した。原審は請求を認容し、Yが上告した。Yは上告理由で、記名の欠缺による書換拒絶の正当性、Eらの株主資格、X自身への招集手続に瑕疵がないことなどを主張した。
争点
- 株主は、自己ではなく他の株主に対する招集手続の瑕疵を理由に決議取消しの訴えを提起できるか
- 取消事由があっても、諸般の事情から取消しが不適当な場合に請求を棄却すべきか(裁量棄却)
- 正当な理由なく名義書換を拒んだ会社が、譲受人の株主名簿未記載を理由に招集通知の不送付を正当化できるか
判旨
上告棄却(決議取消しを認めた原判決を維持)。
- 他の株主への瑕疵:株主は、自己に対する招集手続に瑕疵がなくても、他の株主に対する招集手続に瑕疵があれば、決議取消しの訴えを提起できる。
- 裁量棄却:裁判所は、諸般の事情を斟酌して決議の取消しを不適当と認めるときは、取消しの訴えを棄却することを要する。本件では、Eらが通知を受けず議決権を行使できなかったことが決議に影響しないと認める証拠がなく、そのような事情は認められない。
- 名義書換の不当拒絶:記名を欠く裏書による譲受人の書換請求に、会社は本来応じる義務はない。しかし、会社自身が違法に記名補充を妨げている場合は、記名の欠缺を理由に書換を拒めない。その場合、会社は新株主が株主名簿に記載されていないことを主張できず、新株主への招集通知を欠く招集手続は違法となる。
判決文から
「株主は自己に対する株主総会招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵のある場合には、決議取消の訴を提起し得るのである」
判旨一。他の株主への瑕疵も主張できる
「裁判所は諸般の事情を斟酌して株主総会の決議取消を不適当とするときは取消の訴を棄却することを要する」
判旨二。裁量棄却の承認
「訴外Eらが総会招集の通知を受けず議決権を行使し得なかつたことが、本件総会の決議に影響を及ぼさないとのことを認めるべき証拠はない」
決議への影響の有無が裁量棄却の判断要素となった
「新株主である訴外Eらが株主名簿に記載されていないという事由を主張することは許されず、かかる新株主Eらに招集通知を欠く株主総会の招集手続は違法である」
不当拒絶をした会社は名簿未記載を主張できない
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