最判昭和42年9月26日
定款に記載のない財産引受は、会社が追認しても有効にならない。原則として発起人にも契約の効果は帰属しない
出題:司法H29・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和38(オ)147 自動車譲渡代金請求
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第21巻7号1870頁
- 参照法条
- 商法168条1項6号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 定款に記載のない財産引受と追認の許否 二 定款に記載のない財産引受と発起人等の権利義務
裁判要旨
一 定款に記載のない財産引受は、成立後の会社が追認しても、有効とならない。 二 発起人または発起人組合は、特約の存する場合、民法第一一七条の類推適用により履行の責に任ずべき場合等の特別の事情の認められないかぎり、定款に記載のない財産引受に基づいて、財産引受により会社に帰属すべきものとされた契約上の権利を取得し、またその契約上の義務を負担するものではない。
解説
事案
被上告会社は自動車旅客運送業を主な目的として設立された会社である。設立中の昭和29年2月11日、発起人総会は、上告人が経営していたDタクシーの営業と全車輌その他の設備一切を譲り受けることを全会一致で決議した。これに基づき、上告人が譲渡人となり、相手方を被上告会社代表者名義とする営業譲渡契約書が作成された。上告人自身も発起人の一人である。
この譲受けは原始定款に記載されていなかった。上告人は会社に対し、自動車の譲渡代金を請求し、あわせて不当利得返還を求めた。上告人は、陸運局の認可を得るには営業権(車輌付)の譲受けが不可欠であるから、本件契約は設立に関する行為だと主張した。
原審の判断は次のとおりである。
- 本件契約は定款に記載のない財産引受であり、会社に対しては効力を生じない。
- もっとも、契約は「発起人団体」との間で有効に成立しており、上告人は発起人団体に代金請求権を有する。
- したがって上告人に損失はなく、不当利得返還請求も認められない。
上告人が上告した。
争点
- 営業権・車輌の譲受契約は、会社の設立自体に必要な行為か、それとも開業準備行為としての財産引受か
- 定款に記載のない財産引受を、成立後の会社が追認して有効にできるか
- 無効な財産引受の効果は、発起人または発起人組合に帰属するか
- 無効な財産引受の履行として財産を交付した相手方は、会社に不当利得返還を請求できるか
判旨
結論
- 代金請求部分の上告は棄却した。
- 不当利得返還請求部分は原判決を破棄し、原審に差し戻した。
規範
- 性質決定:成立後の会社の開業準備のための財産譲受契約は財産引受にあたり、設立自体に必要な行為ではない。原始定款への記載(旧商法168条1項6号、現会社法28条2号)その他の法定手続を経なければ、成立後の会社に効力を生じない。
- 追認不可:法定の要件を欠く無効な財産引受は、成立後の会社が追認しても有効とならない。
- 発起人への不帰属:無効な財産引受に基づいて、発起人や発起人組合が当然に契約上の権利を取得し、義務を負うことはない。例外は、当事者間に特約がある場合、民法117条の類推適用により発起人が履行責任を負う場合などの特別の事情がある場合に限られる。
- 不当利得:財産引受を有効と誤信して相手方の財貨が会社に交付され、会社が使用・収益・処分により利得した場合は、不当利得返還の問題が生じうる。
判決文から
「成立後の被上告会社の開業準備のための行為であり、いわゆる財産引受にあたるものと認めるべきもので、被上告会社の設立自体に必要な行為と解することはできない。」
営業に不可欠な財産取得でも財産引受と性質決定した
「成立後の会社が追認したからといつて、法定の要件を欠く無効な財産引受が有効となるものと解することはできない。」
追認否定の結論部分で、短答の頻出箇所
「発起人が設立中の会社のために、会社の成立を条件として特定の財産提供者(発起人でも差支えない。)から一定の財産を譲り受ける契約を指称するものであつて」
財産引受の定義。発起人も相手方になりうる
「相手方から相手方の財貨が成立後の会社に対し交付され、会社が使用収益処分により利得した場合、不当利得返還の問題を生ずる余地があると解すべきである。」
相手方の救済として不当利得の余地を認めた
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
