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最大判昭和42年7月5日

起訴されていない余罪を実質上処罰する趣旨で重く量刑することは憲法31条・38条3項に反するとした大法廷判決

憲法人身の自由裁判・一事不再理訴因と公訴事実の同一性本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R1・予備H25

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和40(あ)2611 窃盗
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第21巻6号748頁
参照法条
憲法31条,憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法410条1項但書

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮したことが憲法第三一条第三八条第三項に違反するとされた事例 二 原判決の憲法違反が判決に影響を及ぼさないとして上告が棄却された事例

裁判要旨

一 起訴されていない犯罪事実で、被告人の捜査官に対する自白のほかに証拠のないものを、いわゆる余罪として認定し、これをも実質上処罰する趣旨のもとに重い刑を科することは、憲法第三一条、第三八条第三項覆に違反する。 二 右のような憲法違反を犯している第一審判決を違法ではないとして認容した違憲が原判決にあつても、原判決が、結論において、第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、自判する際に、余罪を犯罪事実として認定しこれを処罰する趣旨を含めて量刑したものとは認められないときは、右違憲は判決に影響を及ぼさない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、宿直勤務の機会を利用して郵便物を窃取したとして、窃盗で起訴された。

  • 第一審:被告人は郵政監察官・検察官に対し、昭和37年5月ごろから約130回、約3000通の郵便物を窃取し、現金約66万円・郵便切手約23万円分を得たと供述していた。公判廷では、始期は昭和38年5月ごろで、被害額も現金約20万円・切手4、5万円程度だと弁解した。第一審判決はこの弁解を排斥し、捜査段階の供述が「真実に略々近い」とした。そのうえで、犯行の期間・回数・被害額は他に例を見ない程度であり、「量刑にあたつて、この事実を考慮に入れない訳にはいかない」と判示して量刑した。
  • 控訴審:被告人側は「証拠の裏づけのない不確実な事実を量刑資料とした違法」を主張した。原判決は、第一審の判示は本件犯行の罪質・性格(偶発的か計画的か)を判別する資料としたにすぎないとして、この主張を斥けた。他方で、第一審の量刑は重きに失するとして破棄し、懲役10月に処した。
  • 被告人側が上告した。

争点

  • 起訴されていない犯罪事実(余罪)を量刑の資料として考慮することが許されるか、その限界
  • 余罪を実質上処罰する趣旨で量刑し、しかもその余罪が捜査官に対する自白のみで認定されている場合、憲法31条・38条3項に違反するか
  • 原判決に憲法違反があっても、刑訴法410条1項但書により上告を棄却できるか

判旨

上告棄却(裁判官全員一致)。

  • 規範①(禁止される場合):起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、被告人を重く処罰することは許されない。それは不告不理の原則に反して憲法31条に違反し、さらに憲法38条3項の補強法則の制約を免れるおそれがあるからである。
  • 規範②(許される場合):量刑は、被告人の性格・経歴、犯罪の動機・目的・方法等すべての事情を考慮して法定刑の範囲内で決すべきものである。したがって、量刑の一情状として余罪を考慮することは必ずしも禁じられない。
  • あてはめ:第一審判決は、余罪を認定して実質上処罰する趣旨で重い刑を科した。これは憲法31条に違反する。余罪の一部は郵政監察官・検察官に対する自供のみで認定されており、憲法38条3項にも違反する。これを認容した原判決も、結局憲法38条3項に違反する判断をしたことに帰着する。
  • 結論:原判決は自ら量刑する際、余罪を処罰する趣旨を含めて量刑していない。よって、この違憲は刑訴法410条1項但書の「判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合」にあたり、破棄理由とならない。

判決文から

「不告不理の原則に反し、憲法三一条に違反するのみならず、自白に補強証拠を必要とする憲法三八条三項の制約を免れることとなるおそれがあつて、許されない」

余罪の実質処罰が許されない二つの根拠

「その量刑のための一情状として、いわゆる余罪をも考慮することは、必ずしも禁ぜられるところでないと解すべき」

情状としての余罪考慮は許容されるという限界線

「その実質において自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白であるのにこれに刑罰を科したこととなり、同三八条三項にも違反する」

自白のみによる余罪認定が補強法則違反となる理由

「刑訴法四一〇条一項但書にいう判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合にあたり、原判決を破棄する理由とはならない」

違憲があっても上告棄却とした処理

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。