最判昭和42年7月21日
時効完成前に原所有者から譲り受けた者は、登記が時効完成後でも時効取得の当事者であり、時効取得者は登記なしに対抗できる。
出題:司法H27・司法R8・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和41(オ)629 建物収去、土地明渡請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第21巻6号1653頁
- 参照法条
- 民法162条,民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得した者が時効完成後に移転登記を経由した場合と民法第一七七条
裁判要旨
不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し時効完成後に移転登記を経由した者に対し、時効取得者は、登記なくして所有権を対抗することができる。
解説
事案
被上告人の前主Dは、昭和13年3月21日から本件土地を占有してきた。被上告人はこの占有を引き継ぎ、昭和33年3月21日に20年の取得時効(民法162条1項)が完成した。
一方、上告人は時効完成の直前である昭和33年2月に、本件土地の前主(原所有者)から本件土地を買い受けて所有者となった。所有権取得登記を経由したのは、時効完成後の同年12月8日である。
本件は建物収去・土地明渡請求事件である。被上告人が上告人に対し、登記なくして時効取得を対抗できるかが争われた。原審(福岡高裁宮崎支部)はこれを肯定した。上告人は、Dの占有開始の事実認定の不当と、民法177条の適用の誤りを主張して上告した。
争点
- 取得時効完成前に原所有者から不動産を譲り受け、時効完成後に移転登記を経由した者は、民法177条の「第三者」に当たるか
- 時効取得者は、上記の者に対し登記なくして時効による所有権取得を対抗できるか
判旨
上告棄却。
結論:時効取得者は、時効完成前に原所有者から所有権を取得し、時効完成後に移転登記を経由した者に対し、登記なくして時効取得を対抗できる。
規範(答案用):
- 取得時効完成当時の所有者は、時効による所有権の得喪の「いわば当事者」の立場に立つ。
- したがって、時効取得者は時効完成時の所有者に対して、登記なくして時効取得を対抗できる。
- 時効完成前の譲受人は、時効完成時の所有者そのものである。その譲受人がその後(時効完成後に)登記を経由しても、この結論は変わらない。
判決文から
「被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり、したがつて、上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから」
完成時の所有者=当事者という核心の理由
「被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり、このことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによつて消長を来さないものというべきである。」
完成後の登記でも結論不変とした部分
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