最判昭和42年6月30日
被用者が重過失で失火したときは、使用者は選任監督に重過失がなくても民法715条1項の責任を負う。
民法不法行為本試験で 2 問(短答 2・論文 0)
出題:司法R5・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和42(オ)281 損害賠償請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第21巻6号1526頁
- 参照法条
- 失火ノ責任ニ関スル法律,民法715条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
「失火ノ責任ニ関スル法律」と民法第七一五条
裁判要旨
被用者が重大な過失によつて火を失したときは、使用者は、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても、民法第七一五条第一項によつて賠償責任を負う。
解説
事案
被用者が重大な過失によって火を失し、損害が生じた。被害者側は、失火者を使用していた使用者に対し、民法715条に基づいて損害賠償を請求した(原審は大阪高裁)。
上告人は、次のように主張して上告した。
- 「失火ノ責任ニ関スル法律」(失火責任法)は、失火について重過失がある場合に限って責任を認めている。
- その趣旨からすれば、使用者が責任を負うのは、被用者の選任・監督について使用者自身に重大な過失がある場合に限られる。
最高裁第二小法廷は、この主張を退けて上告を棄却した。
争点
- 失火責任法の「重大な過失」の要件は、被用者(失火者)と使用者のどちらについて要求されるか
- 被用者が重過失により失火した場合、使用者が民法715条1項の責任を負うには、選任監督について重大な過失が必要か
判旨
結論:上告棄却。使用者は民法715条1項により賠償責任を負う。
規範
- 失火責任法は、失火者その者の責任条件を定めたものである。失火者を使用していた使用者の帰責条件を定めたものではない。
- したがって、失火者(被用者)に重大な過失があり、使用者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法715条により賠償責任を負う。
- 選任監督について重大な過失がある場合に限って使用者が責任を負う、と解すべきではない。
答案での整理
- 失火責任法の「重大な過失」は、被用者の失火行為について判断する。
- 使用者側の選任監督の注意は、民法715条1項本文・ただし書の通常の枠組みで判断する。
判決文から
「「失火ノ責任ニ関スル法律」は、失火者その者の責任条件を規定したものであつて、失火者を使用していた使用者の帰責条件を規定したものではない」
失火責任法の適用対象を失火者本人に限った核心部分
「失火者に重大な過失があり、これを使用する者に選任監督について不注意があれば、使用者は民法七一五条により賠償責任を負うものと解すべきであつて」
重過失は被用者、使用者は通常の不注意で足りるとした規範
「選任監督について重大な過失ある場合にのみ使用者は責任を負うものと解すべきではない」
使用者に重過失を要求する上告論旨を明確に否定
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