朝日訴訟
生活保護裁決取消訴訟は原告死亡で終了するとし、傍論で25条1項の法的性格と厚生大臣の保護基準設定裁量を示した
出題:司法H22・司法H24・司法H26・司法H27・司法H28・司法H29・司法R1・司法R3・司法R5・予備H27・予備H29・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和39(行ツ)14 生活保護法による保護に関する不服の申立に対する裁決取消請求
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第21巻5号1043頁
- 参照法条
- 民訴法208条,生活保護法59条,行政事件訴訟法9条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
被保護者の死亡と生活保護処分に関する裁決取消訴訟承継の成否
裁判要旨
生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。
解説
事案
上告人は十数年前から療養所に単身の肺結核患者として入所していた。厚生大臣の生活扶助基準で定められた最高額である月600円の日用品費の生活扶助と、給食付きの医療扶助(現物による全部給付)を受けていた。
その後、実兄から扶養料として毎月1500円の送金を受けるようになった。そこで津山市社会福祉事務所長は、生活扶助600円を打ち切り、送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部として本人に負担させる保護変更決定をした。この決定は、岡山県知事および厚生大臣に対する不服申立てでも是認された。
上告人は、厚生大臣を被告として、600円の基準金額は生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するに足りず違法であると主張し、不服申立却下裁決の取消しを求めた。原審(東京高裁)は、基準設定は厚生大臣の専門技術的裁量に委ねられるとして、上告人の請求を認めなかった。
上告人は上告した後、昭和39年2月14日に死亡した。相続人2名が訴訟の承継を主張した。
争点
- 被保護者の死亡により、生活保護処分に関する裁決取消訴訟を相続人が承継できるか(保護受給権の一身専属性)
- 憲法25条1項は個々の国民に具体的権利を付与したものか(傍論)
- 厚生大臣の保護基準設定に対する司法審査の範囲(傍論)
判旨
結論:本件訴訟は上告人の死亡によって終了した。相続人が承継する余地はない。
保護受給権の性質
- 生活保護法に基づく保護の受給は、国の恩恵や反射的利益ではなく法的権利(保護受給権)である。
- ただし、被保護者自身の最低限度の生活を維持するための一身専属の権利であり、譲渡も相続もできない(生活保護法59条参照)。
- 生存中の扶助で既に遅滞にあるものの給付請求権も、被保護者の死亡で当然に消滅する。金銭給付である生活扶助でも同じである。
- 保護受給権を前提とする不当利得返還請求権も相続の対象とならない。
「なお、念のため」の意見(傍論)
- 憲法25条1項は、国の責務を宣言したにとどまり、直接個々の国民に具体的権利を付与したものではない。具体的権利は生活保護法によって初めて与えられる。
- 何が健康で文化的な最低限度の生活かの認定判断は、いちおう厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられる。
- ただし、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど、裁量権の限界を超えた場合や濫用した場合には、違法として司法審査の対象となる。
- 本件基準に裁量権の逸脱・濫用の違法があるとは断定できない。
判決文から
「生活保護を受けるのは、単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。」
保護受給を法的権利と明言した部分
「被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利であつて、他にこれを譲渡し得ないし(五九条参照)、相続の対象ともなり得ないというべきである。」
訴訟終了の直接の根拠(一身専属性)
「この規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」
25条1項の法的性格に関する判示
「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあつても、直ちに違法の問題を生ずることはない。」
保護基準設定の広い行政裁量
「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない。」
裁量逸脱・濫用の審査基準
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
