代理権濫用と民法93条ただし書類推適用
代理人が自己・第三者の利益を図って権限内の行為をした場合、相手方が悪意・有過失なら93条ただし書類推で本人は責任を負わない
出題:司法H23・司法H25・司法H27・司法H29・予備H23・予備H25・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和39(オ)1025 売掛代金請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第21巻3号697頁
- 参照法条
- 民法93条,民法99条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
代理人の権限濫用の行為と民法第九三条
裁判要旨
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第九三条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。
解説
事案
被上告会社(Y)の製菓原料店の主任Eらは、自分たちの利益を図る目的で、主任としての権限を濫用した。Eらは、Y製菓原料店の名義を用いて上告会社(X)と売買取引をした。Xの支配人Dは、Eらが権限を濫用していること、つまりEがYの職務の執行として取引をするのではないことを知りながら、あえてこれに応じて売買契約を締結した。
XはYに対して売掛代金の支払を求めた(上告理由では民法715条の使用者責任も主張)。原審は、DがEらの権限濫用を知っていたと認定し、Yに代金支払義務はないと判断した。これに対してXが上告した。
争点
- 代理人が自己または第三者の利益を図るため権限内の行為をした場合(代理権濫用)に、本人は責任を負うか、その要件は何か
- 被用者の権限濫用行為について、相手方がこれを知っていた場合にも、使用者は民法715条の責任を負うか
判旨
上告棄却。
規範(代理権濫用)
- 代理人が自己または第三者の利益を図るため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知り、または知ることができた場合に限り、民法93条ただし書(改正前)を類推して、本人はその行為について責任を負わない。
- これは代表取締役の行為についての最判昭和38年9月5日と同趣旨である。
- 本件ではXの支配人DがEの権限濫用を知っていたので、Yに代金支払義務はない。
規範(使用者責任)
- 民法715条の「事業ノ執行ニ付キ」は、行為の外形から見て職務の範囲内に属すると見られる場合も含む(外形理論)。
- 被用者が権限を濫用して自己・他人の利益を図った場合でも、原則として使用者は責任を負う。
- ただし、相手方が権限濫用であることを知っていた場合には、その行為は事業の執行についての行為に当たらず、使用者は責任を負わない。
判決文から
「代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の右意図を知りまたは知ることをうべかりし場合に限り、民法九三条但書の規定を類推して、本人はその行為につき責に任じないと解するを相当とする」
代理権濫用の規範。悪意だけでなく有過失も含む
「その行為の相手方たる第三者が当該行為が被用者の権限濫用に出るものであることを知つていた場合には、使用者は右の責任を負わないものと解しなければならない」
715条でも悪意の相手方は保護されない
「代理行為が成立するために必要な代理意思としては、直接本人について行為の効果を生じさせようとする意思が存在すれば足り、本人の利益のためにする意思の存することは必要でない」
大隅意見による93条類推構成への批判の核心
「悪意の相手方がそのことを主張して契約上の権利を行使することは、法の保護の目的を逸脱した権利濫用ないし信義則違反の行為として許されないものと解すべきである」
大隅意見の代替構成(権利濫用・信義則)
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