恵庭事件
札幌地判昭和42年3月29日
自衛隊の通信線切断事件で、構成要件不該当を理由に無罪とし、自衛隊の合憲性についての憲法判断を回避した下級審判決
憲法違憲審査制・憲法訴訟天皇・平和主義裁判所・司法権本試験で 2 問(短答 2・論文 0)
出題:司法R7・司法R8
解説
事案
自衛隊の通信線を切断した行為が、自衛隊法121条違反の罪で起訴された刑事事件である。同条は自衛隊の「その他の防衛の用に供する物」を損壊する行為などを処罰する規定であり、本件では切断された通信線がこれに当たるかが問題となった。事件の性質上、処罰の前提となる自衛隊・自衛隊法の合憲性(憲法9条)も争点となりうる事件であった。札幌地裁は、通信線は同条の「その他の防衛の用に供する物」に当たらないとして被告人を無罪とし、憲法判断には立ち入らなかった。判決はそのまま確定し、最高裁の判断は存在しない。
争点
- 自衛隊の通信線が自衛隊法121条の「その他の防衛の用に供する物」に当たるか
- 法律の解釈・適用で事件を解決できる場合に、裁判所は自衛隊・自衛隊法の合憲性(憲法9条)について判断すべきか(憲法判断回避)
判旨
結論:被告人は無罪。
- 自衛隊の通信線は、自衛隊法121条にいう「その他の防衛の用に供する物」に当たらない。したがって本件切断行為は同条の構成要件に該当せず、無罪となる。
- 構成要件不該当によって無罪の結論が導かれる以上、自衛隊・自衛隊法の合憲性についての憲法判断はせず、これを回避した。
答案で使う規範の形にすると、裁判所は事件の解決に必要な限りで憲法判断を行い、法律の解釈・適用によって事件を解決できるときは、争点として不要な憲法判断をしない(憲法判断回避の準則、いわゆる狭義の回避)ということになる。本判決はこの準則の発想が現れた裁判例として位置づけられる。
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