米兵ひき逃げ事件
同乗者が被害者を走行中の車の屋根から路上に引きずり降ろした介在行為により、過失行為と死亡との因果関係を否定した事例
出題:司法H27・司法R1・司法R8・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和42(あ)710 道路交通法違反、業務上過失致死
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第21巻8号1116頁
- 参照法条
- 刑法第1編第7章(犯罪ノ不成立及ヒ刑ノ減免),刑法211条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
他人の行為の介入があつた場合に刑法上の因果関係が否定された事例
裁判要旨
自動車を運転していた甲が、自転車で通行中の乙と衝突し、これを自車の屋根の上にはね上げたまま走行中、これに気づいた同乗者丙が、乙の身体をさかさまに引きずり降ろし、舗装道路上に転落させた場合において、乙が右自動車との衝突および右道路免への転落によつて頭部等に傷害を負い、右頭部の打撲に基づく脳くも膜下出血等によつて死亡したときは、甲の前記過失行為と被害者の死との間に、刑法上の因果関係があるとはいえない。
解説
事案
被告人は普通乗用自動車を運転中、過失により自転車に乗った被害者に衝突した。被害者ははね上げられて自車の屋根に乗り、意識を失った。被告人はこれに気づかず運転を続けた。衝突地点から4km余り離れた地点で、同乗者Aが被害者に気づき、時速約10kmで走る車の屋根から被害者の身体をさかさまに引きずり降ろし、アスファルト舗装道路上に転落させた。
被害者は、車体との激突と、路面または路上の物体との衝突によって、顔面・頭部の創傷、肋骨骨折など全身に多数の傷害を負い、頭部打撲に基づく脳クモ膜下出血・脳実質内出血で死亡した。ただし、死因となった頭部の傷害が衝突時に生じたのか、転落時に生じたのかは確定しがたいとされた。
原判決は、衝突の衝撃が死を招くことは経験則上当然予想できるから、Aの行為の介入で死の結果が助長されても被告人は致死の責任を免れないとして、業務上過失致死罪(刑法211条)を認めた。被告人は救護義務違反(道路交通法72条1項前段・117条)でも処断されている。
争点
- 過失行為の後に第三者(同乗者)の故意的な行為が介在した場合、過失行為と死の結果との間に刑法上の因果関係が認められるか
- 死因となった傷害がどの行為によって生じたか確定できない場合、因果関係の判断にどう影響するか
判旨
結論:被告人の過失行為と被害者の死との間に刑法上の因果関係はない。業務上過失致死罪は成立せず、業務上過失傷害にとどまる。
- 同乗者が進行中の自動車の屋根から被害者をさかさまに引きずり降ろし、舗装道路上に転落させることは、経験上、普通、予想しうるものではない。
- しかも、死因となった頭部の傷害が衝突時と転落時のどちらで生じたか確定しがたい。このような場合に、被告人の過失行為から死の結果が生じることが経験則上当然予想しうるとは到底いえない。
- 原判決は因果関係の判断を誤り、法令の適用を誤った。
- ただし、被告人は救護義務違反の刑でも処断されている。また、業務上過失致死と同傷害の法定刑は同一であり、量刑も不当ではない。そのため、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとはいえず、上告は棄却された。
判決文から
「同乗者が進行中の自動車の屋根の上から被害者をさかさまに引きずり降ろし、アスフアルト舖装道路上に転落させるというがごときことは、経験上、普通、予想しえられるところではなく」
介在行為の異常性(予見不可能性)を認定した部分
「被害者の死因となつた頭部の傷害が最初の被告人の自動車との衝突の際に生じたものか、同乗者が被害者を自動車の屋根から引きずり降ろし路上に転落させた際に生じたものか確定しがたい」
死因の形成過程が不明である点を重視した部分
「被告人の前記過失行為から被害者の前記死の結果の発生することが、われわれの経験則上当然予想しえられるところであるとは到底いえない。」
経験則を基準に因果関係を否定した結論部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
