約束による自白事件
検察官の「自白すれば起訴猶予」との言葉を信じ、起訴猶予を期待してした自白は任意性に疑いがあり、証拠能力を欠くとした判例
出題:司法H27・予備R4
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和40(あ)1968 収賄
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第20巻6号537頁
- 参照法条
- 憲法38条2項,刑訴法319条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
いわゆる約束による自白の証拠能力。
裁判要旨
自白をすれば起訴猶予にする旨の検察官のことばを信じた被疑者が、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものと解するのが相当である。
解説
事案
収賄被疑事件で、被告人は当初、金品収受の犯意を否認していた。贈賄側Aの弁護人は担当検察官と面談した際、検察官から「見えすいた虚構の弁解をやめて犯意を自供し改悛の情を示せば、検挙前に金品をそのまま返還しているから起訴猶予処分も十分考えられる」との内意を打ち明けられた。あわせて、被告人に自供を勧告したらどうかとの示唆も受けた。そこでAの弁護人は、被告人の弁護人を伴って留置中の被告人に面接し、「改悛の情を示せば起訴猶予にしてやると言っているから、真実貰ったものなら正直に述べたがよい」と勧告した。被告人はこの言葉を信じ、起訴猶予を期待して、同日2回目の取調べから犯意や金銭の使途等を順次自白した。原審は、自白の動機がこのようなものでも、捜査官の取調べ自体に違法がない以上、司法警察員・検察官に対する各供述調書の任意性は否定できないとした。弁護人は、原判決が福岡高判昭和29年3月10日に相反するとして上告した。
争点
- 検察官の起訴猶予の約束を信じ、起訴猶予を期待してした自白(約束による自白)に任意性が認められるか(憲法38条2項、刑訴法319条1項)
- 捜査官の取調べ自体に違法がなければ、自白の任意性は否定されないか
判旨
結論:上告棄却。ただし、自白の任意性に関する原判決の判断は誤りとした。
- 規範:起訴不起訴の決定権をもつ検察官の「自白をすれば起訴猶予にする」旨の言葉を被疑者が信じ、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものとして証拠能力を欠く(刑訴法319条1項)。
- 原判決は、約束に基づく自白の任意性を否定した福岡高裁判例と相反する判断をしており、刑訴法405条3号後段の判例違反に当たる。
- もっとも、各供述調書を除いても、第一審判決の挙げるその余の証拠で犯罪事実を十分に認定できる。そのため、判例違反は判決に影響を及ぼさないことが明らかであり(刑訴法410条1項但書)、原判決破棄の事由にはならない。
判決文から
「被疑者が、起訴不起訴の決定権をもつ検察官の、自白をすれば起訴猶予にする旨のことばを信じ、起訴猶予になることを期待してした自白は、任意性に疑いがあるものとして、証拠能力を欠くものと解するのが相当である。」
約束による自白の規範そのもの
「捜査官の取調べそれ自体に違法が認められない本件においては、前記各供述調書の任意性を否定することはできない。」
最高裁が退けた原審の判断枠組み
「右被告人の司法警察員および検察官に対する各供述調書を除外しても、第一審判決の挙示するその余の各証拠によつて、同判決の判示する犯罪事実をゆうに認定することができる」
結論が上告棄却となった理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
