最大判昭和41年4月20日
時効完成後に債務を承認した債務者は、時効完成を知らなくても、信義則上その後に時効を援用できない
出題:司法H25・司法H29・司法R3・予備H29・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和37(オ)1316 請求異議
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第20巻4号702頁
- 参照法条
- 民法146条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 消滅時効完成後に債務の承認をした場合において右承認はその時効の完成を知つてしたものと推定することの可否 二 消滅時効完成後における債務の承認と当該時効援用の許否
裁判要旨
一 消滅時効完成後に債務の承認をした場合において、そのことだけから、右承認はその時効が完成したことを知つてしたものであると推定することは許されないと解すべきである。 二 債務者が、消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかつたときでも、その後その時効の援用をすることは許されないと解すべきである。
解説
事案
公正証書に基づく強制執行に対し、債務者である上告人が請求異議の訴えを起こし、本件債務の消滅時効を主張した事案である。
- 原審は、上告人が商人であることと、時効完成後に本件債務を承認した事実を認定した。
- そのうえで、上告人は時効の完成を知りながら承認し、時効の利益を放棄したものと推定し、消滅時効の抗弁を退けた。
- 上告人は上告した。理由は、承認の事実認定が違法であること、商人であることと承認の事実から時効利益の放棄を推定するのは経験則違反であること、和解契約成立の主張について判断を遺脱したこと、である。
- 従前の判例(昭和35年6月23日第一小法廷判決)は、時効完成後の承認から時効完成を知っていたことを推定する立場をとっていた。
争点
- 消滅時効完成後に債務を承認した場合、その承認は時効完成を知ってされたもの(=時効利益の放棄)と推定できるか
- 時効完成を知らずに債務を承認した債務者は、その後に消滅時効を援用できるか
判旨
上告棄却。
- 推定の可否(判例変更):消滅時効完成後に債務を承認した事実だけから、その承認が時効完成を知ってされたものと推定することは許されない。債務者が商人であっても同じである。昭和35年6月23日第一小法廷判決はこれと異なる見解に立つので、変更する。原審の推定は経験則に反する。
- 援用の可否:債務者が時効完成後に債権者に対して債務を承認した以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、その後に完成した消滅時効を援用することは、信義則に照らして許されない。
- 本件では時効完成後の承認があるため、上告人はもはや時効を援用できない。原審が消滅時効の抗弁を排斥した結論は正当である。
答案用の規範:「債務者が消滅時効完成後に債務を承認した場合には、時効完成の事実を知らなかったときでも、信義則上、その後その時効を援用することは許されない。」
判決文から
「債務者は、消滅時効が完成したのちに債務の承認をする場合には、その時効完成の事実を知つているのはむしろ異例で、知らないのが通常であるといえるから」
放棄の推定を否定した理由(経験則)
「債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。」
援用権喪失の規範そのもの
「時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから」
信義則による根拠づけ(矛盾行為・相手方の信頼)
「かく解しても、永続した社会秩序の維持を目的とする時効制度の存在理由に反するものでもない。」
時効制度の趣旨との整合性
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
