SaySayLaw

最判昭和40年4月2日

口頭弁論終結前に相殺適状にあっても、終結後の相殺の意思表示による債務消滅は請求異議事由になるとした判例

民事訴訟法判決の効力・既判力訴訟行為・期日期間本試験で 4 問(短答 4・論文 0)

出題:司法H25・予備H28・予備R2・予備R6

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
昭和38(オ)1066 請求異議
裁判
判決・棄却
判例集
民集 第19巻3号539頁
参照法条
民訴法545条,弁護士法25条1号,弁護士法25条2号,弁護士法25条3号,民法468条,民法505条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 口頭弁論終結前に相殺適状にある場合において右弁論終結後の相殺による債務消滅は請求異議の原因になるか。 二 弁護士法第二五条第一号または第二号に違反しないとされた事例。 三 弁護士法第二五条第三号の「受任している事件」の意義。 四 債権譲渡の通知前に相殺適状にある場合と債権譲受人に対する相殺の適否。

裁判要旨

一 債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあつたとしても、右弁論終結後になされた相殺の意思表示により債務が消滅した場合には、右債務の消滅は、請求異議の原因となりうる。 二 甲の代理人として乙に対する調停の申立をなし、その調停によつて乙の甲に対する贈与契約を成立させた弁護士が、後に乙の訴訟代理人となつて、右贈与契約上の債権を甲から譲り受けた丙を被告として、右債権が乙の甲に対する反対債務をもつてする相殺によつて消滅したと主張する訴を提起しても、当該訴訟事件の相手方から協議を受け、または依頼を受諾したことがあるとはいえないから、弁護士法第二五条第一号または第二号に違反しない。 三 弁護士法第二五条第三号の「受任している事件」とは、すでに終了した事件を含まない。 四 債務者が債権譲渡の通知を受ける前に譲渡人に対し相殺適状にある反対債権を有している場合には、右譲渡通知を受けた後においても、債務者は債権譲受人に対し相殺をもつて対抗することができる。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被上告人Xと内縁関係にあったDは、Xの旅館経営に必要な土地をその所有者から無償で譲り受け、Xに所有権を移転すると約した。この約束が履行されないうちに内縁は解消されることになった。XD間で、XがDに100万円を贈与する(50万円は即日、残50万円は昭和31年1月末日まで)ことを含む内縁解消契約が結ばれ、同時に土地移転の約束をDが速やかに履行することも確約された。

Xは50万円を支払ったが、残金の支払を遅滞した。Dはこの契約上の債権一切を上告人Yに譲渡し、Xに通知した。YはXに残金50万円を請求する訴えを提起し、勝訴判決が確定した。

そこでXは、Dが責めに帰すべき事由により土地移転義務を履行不能にしたことによる損害賠償債権で相殺したと主張し、この確定判決を債務名義とする請求異議訴訟を提起した。

これに対しYは、Xの訴訟代理人F弁護士が、かつてDの依頼で上記調停を申し立てて契約証書も作成していたことから、弁護士法25条違反で訴訟行為は無効だと主張した。原審はXの請求を認め、Yが上告した。

争点

  • 債務名義たる判決の口頭弁論終結前に相殺適状にあった場合、終結後の相殺の意思表示による債務消滅は請求異議の原因となるか(旧民訴法545条2項、現民事執行法35条2項)
  • 相手方の前主から依頼を受けて調停を担当した弁護士が、その後に反対当事者の訴訟代理人となることは弁護士法25条1号・2号に違反するか
  • 弁護士法25条3号の「受任している事件」に、すでに終了した事件が含まれるか
  • 債権譲渡の通知前に譲渡人に対し相殺適状にある反対債権を有する債務者は、通知後も譲受人に相殺を対抗できるか

判旨

上告棄却。

  • 相殺と請求異議:債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあったとしても、終結後にされた相殺の意思表示によって債務が消滅した場合、その消滅は請求異議の原因となりうる。大審院連合部明治43年11月26日判決を維持した。
  • 弁護士法25条1号・2号:F弁護士が依頼を受けたのはYではなくDからであり、本件の相手方Yから協議を受けたり、依頼を受諾したりした事実はない。したがって1号・2号に触れる余地はない。
  • 弁護士法25条3号:「受任している事件」には、すでに終了した事件は含まれない。Dから受任した調停事件は終了しているので、3号にも抵触しない。
  • 債権譲渡と相殺:債権譲渡の通知前に譲渡人に対し反対債権を有し、それが相殺適状にある限り、債務者は通知後も、その債権を自動債権として譲受人に相殺を対抗できる。
  • その他:不動産贈与は引渡しによって履行が終わったといえ(民法550条ただし書)、登記を要しない。裁判官交代後に従前の口頭弁論の結果が陳述されていれば、弁論更新の手続違反(旧民訴法187条2項)はない。

判決文から

「相殺は当事者双方の債務が相殺適状に達した時において当然その効力を生ずるものではなくて、その一方が相手方に対し相殺の意思表示をすることによつてその効力を生ずるものである」

遮断されない理由の核心(意思表示で効力発生)

「口頭弁論の終結後に至つてはじめて相殺の意思表示がなされたことにより債務消滅を原因として異議を主張するのは民訴法五四五条二項の適用上許される」

請求異議事由となるという結論部分

「一般に債権譲渡の通知前に譲渡人に対し反対債権を有し、かつそれが相殺適状にある限りは、右譲渡通知後においても、債務者は右債権を自動債権として、債権を譲り受けた新債権者に対し相殺をもつて対抗することができる」

債権譲渡と相殺の対抗に関する判断

「訴外Dから受任した右調停事件はすでに終了し、現に受任している事件にはあたらない」

弁護士法25条3号の「受任している事件」の意義

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。