待命処分事件
高齢は社会的身分に当たらないが、14条1項後段の列挙事由は例示であり、合理的理由のない差別を禁じる趣旨だとした判例
出題:司法H22・司法H27・司法H30・司法R5・予備H24・予備H27・予備H30・予備R4・予備R5
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和37(オ)1472 待命処分無効確認、判定取消等請求
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第18巻4号676頁
- 参照法条
- 憲法14条,地方公務員法13条,昭和29年法律192号地方公務員法の一部を改正する法律附則3項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
高齢者であることを一応の基準としてなされた地方公務員の待命処分と憲法第一四条第一項および地方公務員法第一三条。
裁判要旨
町長が町条例に基づき、過員整理の目的で行なつた町職員に対する待命処分は、五五歳以上の高齢者であることを一応の基準としたうえ、その該当者につきさらに勤務成績等を考慮してなされたものであるときは、憲法第一四条第一項および地方公務員法第一三条に違反しない。
解説
事案
a町長は、地方公務員法に基づいて制定されたa町待命条例の権限(職員にその意に反して臨時待命を命じることなどができる権限)に基づき、町職員定員条例の定員を超える職員の整理を計画した。そこで、合併前の旧町村の町村長・助役・収入役であった者のうち年齢55歳以上の者について、後進に道を開く意味でその退職を望み、臨時待命の主な対象として考えた。該当する職員約10名に退職を勧告したうえで、建設課長であった上告人(当時66歳)に待命処分をした。上告人がこれに該当し、かつ勤務成績が良好でないなどの事情を考慮した結果である。
上告人は、高齢を理由とする本件処分は社会的身分による差別であり、憲法14条1項と地方公務員法13条に違反すると主張した。原審は、高齢は社会的身分に当たらないとしてこの主張を退けた。上告人は上告し、次の2点を争った。
- 社会的身分の解釈が誤っている。
- 両条は列挙事由以外による差別も禁止している。
争点
- 高齢であることは憲法14条1項(地方公務員法13条)の「社会的身分」に当たるか
- 憲法14条1項後段の列挙事由は限定列挙か例示列挙か
- 55歳以上の高齢を一応の基準とした待命処分が憲法14条1項・地方公務員法13条に違反するか
判旨
上告は理由がない(本件待命処分は合憲・適法)。
- 社会的身分の意義:憲法14条1項・地方公務員法13条にいう社会的身分とは「人が社会において占める継続的な地位」をいう。高齢であることはこれに当たらない。
- 列挙事由の性質:列挙された事由は例示的なもので、それに限られない。そのため、「社会的身分に当たらない」という一事だけで主張を退けた原判決は、十分に意を尽くしたものとはいえない。
- 平等の意味:両条は絶対的平等を保障したものではない。差別すべき合理的な理由のない差別を禁止する趣旨であり、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱いは許される。
- あてはめ:誰に臨時待命を命じるかは、任命権者の適正な裁量に任されている。55歳以上の高齢を一応の基準とし、さらに勤務成績が良好でないことなどを考慮して行った本件処分は、裁量権の範囲を逸脱しておらず、不合理な差別でもない。
判決文から
「憲法一四条一項及び地方公務員法一三条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解される」
社会的身分の定義。広義説的と理解される部分
「右各法条に列挙された事由は例示的なものであつて、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当である」
後段列挙事由は例示列挙だとした部分
「右各法条は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきである」
相対的平等の規範
「事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない」
合理的区別は許されるという判断枠組み
「何人に待命を命ずるかは、任命権者が諸般の事実に基づき公正に判断して決定すべきもの、すなわち、任命権者の適正な裁量に任せられているものと解するのが相当である」
あてはめの前提となる任命権者の裁量
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