二段の推定
本人の印章による印影があれば本人の意思による押印と事実上推定され、民訴法228条4項により文書全体の真正が推定される
出題:司法H23・司法H25・予備H23・予備H25・予備H30
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和39(オ)71 求償債権等請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第18巻4号597頁
- 参照法条
- 民訴法326条,民訴法185条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出された場合と文書の真正の推定。
裁判要旨
私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのを相当とするから、民訴法第三二六条により、該文書が真正に成立したものと推定すべきである。
解説
事案
求償債権等を請求した事件である。原審(大阪高裁)では、次の各私文書の成立の真正が争われた。
- 甲1号証の1(保証委託契約書)
- 甲3号証の1(委任状)、同2(調書)
- 甲4号証の1(手形割引約定書)、同2(約束手形)
これらの文書の上告人名下の印影が上告人の印章によって顕出されたことは、当事者間に争いがなかった。原審は、これを理由に、各文書は旧民訴法326条(現行民訴法228条4項)により真正に成立したものと推定されると判示した。
上告人側は、訴外Dが上告人の印章を盗用したと主張していた。しかし原審は、証人Dと控訴本人の各供述は推定を妨げる反証にならず、印章盗用の事実も認められないとした。上告人は、意思表示に関する法原則違背、旧民訴法326条の解釈適用の誤り、理由齟齬などを主張して上告した。
争点
- 旧民訴法326条(現228条4項)の「署名又ハ捺印アルトキ」の意味
- 文書中の印影が本人の印章によって顕出された事実が確定した場合に、本人の意思に基づく押印と推定できるか
- その推定を経て、文書全体の成立の真正が推定されるか
判旨
上告棄却。
- 旧民訴法326条(現228条4項)の「本人又は其の代理人の署名又は捺印あるとき」とは、署名・捺印が本人またはその代理人の意思に基づいて真正に成立したときをいう。
- 文書中の印影が本人(または代理人)の印章によって顕出された事実が確定されたときは、反証がない限り、その印影は本人(または代理人)の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当である(一段目の推定)。
- この推定の結果、文書は同条の「捺印あるとき」の要件を充たし、文書全体が真正に成立したものと推定される(二段目の推定)。
答案用の規範:私文書の印影が作成名義人の印章によるものであるときは、反証のない限り、その押印は名義人の意思に基づくものと事実上推定され、さらに民訴法228条4項により文書全体の成立の真正が推定される。
判決文から
「民訴三二六条に「本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ」というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが」
推定の前提となる押印は本人の意思に基づく必要がある
「文書中の印影が本人または代理人の印章によつて顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり」
一段目の推定(事実上の推定)の規範
「右推定がなされる結果、当該文書は、民訴三二六条にいう「本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ」の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなるのである。」
二段目として228条4項の推定につながる構造
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