最判昭和39年3月6日
遺贈による不動産所有権の取得も民法177条の適用を受け、受遺者は登記なしに相続人の差押債権者に対抗できない。
出題:司法H27・司法R1・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和36(オ)338 第三者異議
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第18巻3号437頁
- 参照法条
- 民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
不動産の遺贈と民法第一七七条の第三者。
裁判要旨
甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に、甲の相続人の一人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産につき相続による持分取得の登記をなし、ついでこれに対し強制競売の申立をなし、該申立が登記簿に記入された場合においては、丁は、民法第一七七条にいう第三者に該当する。
解説
事案
Dは昭和33年6月11日付の遺言で、本件不動産をE外5名に遺贈した。遺贈は同月17日、Dの死亡により効力を生じたが、遺贈を原因とする所有権移転登記はされなかった。
Dの相続人の一人Fに対する債権者(被上告人)は、同年7月10日、Fに対する強制執行として次の手続をした。
- Fに代位し、Fのために本件不動産につき相続による持分(4分の1)取得の登記をした。
- 続いて、その持分に対する強制競売申立てが登記簿に記入された。
その後、遺言執行者が選任された。本件は第三者異議事件である。原審は、被上告人が民法177条の第三者に当たり、受遺者は所有権取得を被上告人に対抗できないと判断し、これに対して上告がされた。
争点
- 遺贈による不動産の物権変動に民法177条が適用されるか(受遺者は登記なしに第三者に対抗できるか)
- 相続人の持分を差し押さえた債権者(代位による相続登記の上、強制競売申立てが記入された者)は民法177条の第三者に当たるか
- 差押え(競売申立記入登記)の後に遺言執行者が選任されたことが、差押債権者の第三者たる地位に影響するか
判旨
上告棄却。
規範
- 遺贈は、意思表示によって物権変動を生じる点で贈与と異ならない。そのため、遺贈が効力を生じても、移転登記がされない間は完全に排他的な権利変動を生じない。
- 民法177条が物権の得喪変更について広く登記を対抗要件としている以上、遺贈を例外とする理由はない。遺贈の場合も二重譲渡等と同様、登記が物権変動の対抗要件となる。
あてはめ
- 遺贈の登記がされない間に、被相続人と法律上同一の地位にある相続人Fの持分に対する強制競売申立てが登記簿に記入された。
- 申立てをした債権者は、Fの持分に対する差押債権者として民法177条の第三者に該当する。
- 受遺者は、登記がなければ所有権取得をその債権者に対抗できない。
- 競売申立記入登記の後に遺言執行者が選任されても、差押債権者の第三者たる地位に影響しない。
判決文から
「遺贈が効力を生じた場合においても、遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は、完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。」
不完全物権変動説を遺贈に及ぼした部分
「遺贈をもつてその例外とする理由はないから、遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様、登記をもつて物権変動の対抗要件とするものと解すべきである。」
遺贈に177条が適用されるとの規範
「前記Fの本件不動産持分に対する差押債権者として民法一七七条にいう第三者に該当し、受遺者は登記がなければ自己の所有権取得をもつて被上告人に対抗できないものと解すべきであり」
相続人の差押債権者が第三者に当たるとの結論
「競売申立記入登記後に遺言執行者が選任せられても、それは被上告人の前記第三者たる地位に影響を及ぼすものでないと解するのが相当である。」
遺言執行者の事後選任は影響しないとの判断
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