奈良県ため池条例事件
ため池の堤とうの使用を条例で禁止・処罰しても憲法29条2項・3項に反せず、損失補償も要しないとした大法廷判決
出題:司法H22・司法H23・司法H24・司法H25・司法H26・司法R3・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和36(あ)2623 ため池の保全に関する条例違反
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 刑集 第17巻5号521頁
- 参照法条
- ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例38号)1条,ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例38号)2条,ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例38号)4条,ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例38号)9条,憲法29条,憲法94条,憲法29条3項,憲法31条,地方自治法2条2項,地方自治法2条3項1号,地方自治法2条3項2号,地方自治法2条3項8号,地方自治法2条3項18号,地方自治法2条3項19号,地方自治法14条1項,地方自治法14条2項,地方自治法14条5項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
奈良県ため池の保全に関する条例(昭和二九年奈良県条例第三八号)第四条第二号、第九条(所定のため池の堤とうに竹木若しくは農作物を植える等の行為をした者を三万円以下の罰金に処するとしたもの)の合憲性。
裁判要旨
奈良県ため池の保全に関する条例(昭和二九年奈良県条例第三八号)第四条第二号、第九条は、憲法第二九条第二項、第三項に違反しない。
解説
事案
奈良県には1万3000余のかんがい用貯水池がある。県は、貯水池の破損・決かいによる災害が所有者にとどまらず一般住民らの生命・財産に大きな損傷を及ぼすことから、ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例38号)を制定した。同条例4条は、何人も、ため池の堤とうに竹木や農作物を植え、または建物その他の工作物(保全上必要なものを除く)を設置する行為(2号)などをしてはならないと定め、9条は違反者を3万円以下の罰金に処するとした。
本件ため池は、登記簿上は個人2名の名義であるが、実質は大字居住農家の共有ないし総有である。受益農地は30町歩以上に及ぶ。周囲の堤とうでは、居住者約27名が父祖の代から竹・果樹・茶などを栽培してきた。条例施行後、他の者は任意に栽培をやめたが、被告人らは耕作を続けたため起訴された。
原審(大阪高裁)は、財産権の制限は法律によるべきこと、補償がないことなどを理由に、条例の効力は被告人らに及ばないとして無罪とした。検察官が上告した。
争点
- 財産権を条例で制限することは憲法29条2項(「法律でこれを定める」)に反しないか
- ため池の堤とうの使用をほぼ全面的に禁止する規制に、憲法29条3項の損失補償が必要か
- 条例で罰則を定めることは憲法31条に反しないか
判旨
原判決破棄・差戻し。条例4条2号・9条は憲法29条2項・3項に違反しない。
- 規制の評価:4条2号は、堤とうを使用する財産上の権利をもつ者には、その使用をほとんど全面的に禁止するもので、財産権に著しい制限を加える。
- 受忍義務:しかし、この制限は災害を未然に防止するという社会生活上やむを得ない必要から来るものである。権利者は何人も、公共の福祉のため当然これを受忍すべき責務を負う。
- 保障の範囲外:ため池の破損・決かいの原因となる堤とうの使用行為は、憲法・民法の保障する財産権の行使の埒外にある。したがって、これを条例で禁止・処罰しても、憲法・法律に抵触・逸脱しない。同じ事項を定める法令もない。
- 補償:このような制約は当然受忍すべき責務であるから、憲法29条3項の損失補償は不要である。
- 罰則:条例の罰則が憲法31条に反しないことは、最大判昭和37年5月30日の趣旨による。
判決文から
「その使用を殆んど全面的に禁止することとなり、同条項は、結局右財産上の権利に著しい制限を加えるものであるといわなければならない。」
制限が著しいこと自体は認めている点
「それは災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであつて、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない責務を負うというべきである」
合憲・補償不要を導く受忍義務の核心
「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであつて、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく」
「財産権行使の埒外」論という独自の論理
「そのような制約は、ため池の堤とうを使用し得る財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきものであつて、憲法二九条三項の損失補償はこれを必要としないと解するのが相当である。」
損失補償不要の結論部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
