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加持祈祷事件

最大判昭和38年5月15日

宗教行為としての加持祈祷でも、違法な有形力で人を死亡させれば信教の自由の限界を逸脱し、傷害致死罪での処罰は合憲とした

憲法信教の自由・政教分離違法性阻却(正当防衛・緊急避難)本試験で 5 問(短答 5・論文 0)

出題:司法H22・司法H26・司法H28・司法H30

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和36(あ)485 傷害致死
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第17巻4号302頁
参照法条
憲法20条1項,刑法205条,刑訴法218条,刑訴法220条,刑訴法318条,刑訴法321条3項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 加持祈祷の結果人を死亡させた行為と憲法第二〇条第一項 二 捜査の必要上、宗教的行事の外形を再現した検証調書と証拠能力の有無

裁判要旨

一 精神異常者の平癒を祈願するために宗教行為として加持祈祷行為がなされた場合でも、それが原判決の認定したような他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、それにより被害者を死に致したものである以上、憲法第二〇条第一項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかなく、これを刑法第二〇五条に該当するものとして処罰することは、何ら憲法の右条項に反するものではない。 二 上告趣意第五中に、司法警察員作成の昭和三三年一〇月二五日付検証調書の内容である検証は、宗教的所作を、宗教を伴わないで再現しようとしたものであつて、宗教に対する冒涜であるから、かかる検証調書は、証拠能力を有しない旨の主張があるが、捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、被害者Aの精神異常の平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行を行った。その過程でAに暴行を加え、Aを死亡させた。第一審判決とこれを是認した原判決は、加持祈祷の動機、手段、方法、Aの生命を奪うに至った暴行の程度などからみて、本件行為は医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認められないと認定した。そのうえで傷害致死罪(刑法205条)の成立を認め、刑法35条の正当業務行為にも当たらないとした。

弁護人は上告し、主に次の2点を主張した。

  • 本件行為は宗教行為であり、これを処罰することは憲法20条1項に違反する。
  • 宗教的所作を宗教を伴わずに再現した検証は宗教への冒涜であり、その検証調書には証拠能力がない。

争点

  • 宗教行為として行われた加持祈祷により人を死亡させた行為を刑法205条で処罰することは、憲法20条1項に違反するか
  • 信教の自由の保障は絶対無制限か(憲法12条・13条の意義)
  • 本件行為は刑法35条の正当業務行為として違法性が阻却されるか
  • 捜査の必要上、宗教的行事の外形を再現した検証の調書に証拠能力はあるか

判旨

上告棄却(裁判官全員一致)。

  • 信教の自由の保障も絶対無制限ではない。 憲法12条・13条は単なる教訓的規定ではなく、基本的人権は公共の福祉による制約に服する。
  • 規範:一種の宗教行為として行われたものであっても、他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当たり、これにより被害者を死に至らせた以上、その行為は著しく反社会的であり、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱する。したがって、刑法205条で処罰しても憲法20条1項に反しない。
  • 本件行為を刑法35条の正当な業務行為と認めなかった原判決は、確定した事実関係の下では正当である。
  • 捜査の必要上、宗教行為としてではなく宗教的行事の外形を再現しても、その一事をもって宗教への冒涜とはいえない。その状況を記載した検証調書が証拠能力を欠くことにもならない(なお本件では、被告人側が同意していた)。

判決文から

「これら憲法の規定は、決して所論のような教訓的規定というべきものではなく、従つて、信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。」

12・13条を根拠に信教の自由の制約を肯定した部分

「医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ない」

治療行為性を否定した事実認定の核心

「被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであつて、憲法二〇条一項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはなく」

保障の限界を逸脱するとした結論部分

「被告人の本件行為が、刑法三五条の正当な業務行為と認め難いとした原判決の判示は、その確定した事実関係の下においては、当裁判所もこれを正当と認める。」

正当業務行為による違法性阻却を否定

「捜査の必要上、宗教行為としてでなく、宗教的行事の外形を再現したからといつて、その一事をもつてそれが宗教に対する冒涜であり、その状況を記載した検証調書が証拠能力を有しないものであるということはできない。」

判示事項二:検証調書の証拠能力

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。