共同相続と登記
共同相続人は、他の相続人の単独登記を基礎に登記を得た第三者に対し、自己の持分を登記なくして対抗でき、更正登記を求めうる。
出題:司法H24・司法H26・司法H28・予備H24・予備H29・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和35(オ)1197 登記抹消登記手続請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第17巻1号235頁
- 参照法条
- 民法177条,民法898条,民法249条,不動産登記法63条,民訴法186条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 共同相続と登記 二 共有持分に基づく登記抹消請求の許否 三 当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否
裁判要旨
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 右の場合、甲が乙丙に対し右登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が乙丙に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、民訴法第一八六条に反しない。
解説
事案
上告人らとDは、本件各不動産を共同相続した。持分は上告人らが合計9分の7、Dが9分の2である。ところがDは、本件各不動産について単独所有権の移転登記をした。被上告人ら(B商事株式会社を含む)は、Dから売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記を受けた。
上告人らは、共有権に基づく妨害排除として、被上告人らに対しその登記の全部抹消登記手続を求めた。原審は、全部抹消を認めなかった。仮登記をDの持分9分の2についてのものに改める更正登記手続を求める限度でのみ、請求を認容した。
上告人らは、次の点などを理由に上告した。
- 原判決は登記義務者・登記権利者を誤解している。
- 当事者が申し立てていない更正登記を命じたのは違法である。
争点
- 共同相続人の一人が単独登記をし、そこから登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は自己の持分を登記なくして対抗できるか(民法177条)
- その場合、他の共同相続人は各登記の全部抹消を請求できるか、それとも自己の持分についての一部抹消(更正)登記に限られるか
- 全部抹消請求に対し更正登記を命じる判決は、申立事項を超える判決として処分権主義(旧民訴法186条)に反するか
判旨
上告棄却。
- 対抗の可否:共同相続人中の乙が相続不動産につき単独所有権移転登記をし、さらに乙から登記を受けた第三取得者丙がいる場合、他の共同相続人甲は、乙・丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。
- 請求の範囲:甲が共有権に対する妨害排除として乙・丙に請求できるのは、各所有権取得登記の全部抹消ではなく、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続である。
- 処分権主義との関係:更正登記は実質において一部抹消登記である。したがって、全部抹消請求に対し更正登記を命じても、申立ての範囲内でその分量的な一部を認容したにすぎず、申し立てない事項について判決したことにはならない。
判決文から
「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。」
共同相続と登記の結論部分
「けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」
無権利の登記+公信力否定という理由づけ
「各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない」
請求できるのは更正登記に限られる
「けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており、また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである。」
全部抹消を否定する理由
「原判決は上告人らの申立の範囲内でその分量的な一部を認容したものに外ならないというべく」
更正登記判決は一部認容で処分権主義に反しない
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