最判昭和37年8月21日
債権者の代理人と称する者も民法478条の債権の準占有者に当たり、弁済が有効となるには弁済者の善意無過失を要するとした判例
出題:司法H26・司法R5・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和33(オ)388 納品代金請求
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第16巻9号1809頁
- 参照法条
- 民法478条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 債権者の代理人と称して債権を行使する者に対する民法第四七八条の適用の有無 二 債権の準占有者に対する弁済と弁済者の善意無過失
裁判要旨
一 債権者の代理人と称して債権を行使する者についても民法第四七八条が適用される。 二 債権の準占有者に対する弁済が有効とされるためには、弁済者が善意かつ無過失であることを要する。
解説
事案
上告会社は、東京特別調達局(特調)との連合軍調達物資の需品契約に基づいて納品し、特調から代金支払のための受理書の交付を受けた。特調では、業者が出納課に受理書と代金領収書を提出すると、出納課が受理書を保管中の控と照合し、領収書の印影を届出印と対照したうえで小切手を交付する、という段階的な支払手続がとられていた。
ところが、「D元彦」と称する者が、上告会社が交付を受けた受理書とは別の受理書を出納課に提出し、代金の支払を受けた。この受理書は、特調備付けの用紙が使われ、特調備付けの日附印や担当官の印が押された偽造のものであった。特調には、真正の受理書に符合する控が、偽造受理書に符合する控とすりかえられて保管されていた。
特調では用紙・印鑑・書類の保管が盗用のおそれがないほど厳重ではなく、業者が執務室に無断で出入りすることも少なくなかった。上告会社が納品代金を請求したところ、原審は、末端の出納課係官が善意無過失であったとして、弁済を有効とした。
争点
- 債権者の代理人と称して債権を行使する者(詐称代理人)は、民法478条の「債権の準占有者」に当たるか
- 債権の準占有者に対する弁済が有効となるには、弁済者の無過失も必要か
- 数人が段階的に関与する弁済手続で、弁済者の過失をどう評価するか
判旨
原判決を破棄し、差し戻した。
- 詐称代理人も準占有者に当たる:債権者の代理人と称して債権を行使する者も、民法478条の「債権の準占有者」に当たる(原審の判断を是認)。
- 善意無過失が必要:準占有者に対する弁済が478条で有効とされるのは、弁済者が善意かつ無過失である場合に限られる。
- 段階的手続での過失の評価:弁済手続に数人が段階的に関与して一連の手続をしている場合、手続に関与する各人の過失は、いずれも弁済者側の過失として評価される。一連の手続のいずれかの部分の担当者に過失があれば、末端の担当者に過失がなくても、弁済者は無過失を主張できない。
- 本件へのあてはめ:本件では、特段の事情がない限り、特調は無過失を主張できず、弁済を有効とすることはできない。
判決文から
「債権者の代理人と称して債権を行使する者も民法四七八条にいわゆる債権の準占有者に該ると解すべきことは原判決説示のとおりであつて」
詐称代理人も準占有者に含めた中心部分
「民法四七八条により債権の準占有者に対する弁済が有効とされるのは、弁済者が善意かつ無過失である場合に限ると解すべき」
善意に加えて無過失を要件とした
「弁済手続に数人の者が段階的に関与して一連の手続をなしている場合にあつては、右の手続に干与する各人の過失は、いずれも弁済者側の過失として評価され」
組織的弁済での過失の評価方法
「右の一連の手続のいずれかの部分の事務担当者に過失があるとされる場合は、たとえその末端の事務担当者に過失がないとしても、弁済者はその無過失を主張しえないものと解するのが相当」
末端担当者の無過失だけでは足りない
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