第三者所有物没収事件
告知・弁解・防禦の機会を与えずに第三者の所有物を没収することは憲法31条・29条に違反し、被告人もその違憲を上告で争えるとした。
出題:司法H22・司法H23・司法H25・司法H28・司法H29・司法R3・司法R5・予備H28
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和30(あ)2961 関税法違反
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 刑集 第16巻11号1593頁
- 参照法条
- 関税法118条,憲法29条,憲法31条,刑訴法405条1号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 関税法第一一八条第一項により第三者の所有物を没収することは、憲法第三一条、第二九条に違反するか 二 第三者所有物の没収の違憲を理由として上告することができるか
裁判要旨
一 関税法第一一八条第一項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第三一条、第二九条に違反する。 二 前項の場合、没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、これを違憲であるとして上告することができる。
解説
事案
被告人A・Bは、関税法違反(関税法111条の密輸出の罪の共同正犯)で起訴され、有罪とされた。第一審は、被告人らが密輸出しようとした貨物を関税法118条1項により没収し、原審(福岡高裁)もこれを是認した。原審の確定したところでは、この貨物は被告人以外の第三者の所有物であった。
関税法118条1項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶・貨物等を、被告人以外の第三者の所有に属する場合にも没収する旨を定めている。しかし、その第三者に告知・弁解・防禦の機会を与える手続は、関税法にも刑訴法その他の法令にも定められていなかった。
被告人側は、第三者の所有物の没収は違憲であるとして上告した。最高裁大法廷は、原判決と第一審判決を破棄して自判した。被告人らに懲役刑(執行猶予付き)を言い渡し、犯行の用に供した被告人B所有の機帆船(換価代金)は没収したが、第三者所有の貨物は没収しなかった。
争点
- 関税法118条1項により、所有者に告知・弁解・防禦の機会を与えないまま第三者の所有物を没収することは、憲法31条・29条に違反するか
- 没収の言渡しを受けた被告人は、第三者の所有物の没収の違憲を理由として上告できるか(第三者の権利の援用・違憲主張の適格)
判旨
結論1:関税法118条1項により第三者の所有物を没収することは、憲法31条・29条に違反する。
規範1:
- 第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶ。
- そのため、所有者である第三者にも告知・弁解・防禦の機会を与えることが必要である。
- この機会を与えずに所有権を奪うことは、適正な法律手続によらずに財産権を侵害する制裁を科すものであり、憲法31条・29条に違反する。
- この結論は、第三者に事後的な権利救済の方法が認められるかどうかとは別問題である。
結論2:没収の言渡しを受けた被告人は、第三者の所有物に関する場合であっても、没収の裁判の違憲を理由として上告できる。その理由は次の2点である。
- 没収は被告人に対する附加刑である。
- 被告人も、占有権の剥奪、使用・収益の不能、第三者からの賠償請求の危険という利害関係を有する。
これと矛盾する最大判昭和35年10月19日を変更した。
判決文から
「第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。」
告知・聴聞を要求する中心規範
「そして、このことは、右第三者に、事後においていかなる権利救済の方法が認められるかということとは、別個の問題である。」
事後救済の有無で合憲とはならない
「前記関税法一一八条一項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法三一条、二九条に違反するものと断ぜざるをえない。」
違憲判断の結論部分(違憲の形式に注意)
「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。」
被告人の違憲主張適格の第一の理由
「被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかである」
被告人自身の利害関係という第二の理由
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
