最大判昭和36年6月7日
緊急逮捕の着手前、被疑者の不在中に行った捜索差押えも、逮捕と時間的に接着し場所が同一なら刑訴法220条により適法とした判例
出題:司法R8・予備H27・予備R3・予備R5・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和31(あ)2863 麻薬取締法違反
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 刑集 第15巻6号915頁
- 参照法条
- 憲法33条,憲法35条,刑訴法210条,刑訴法220条,刑訴法309条,刑訴法326条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 被疑者の緊急逮捕に着手する以前その不在中になされた捜索差押は適法か 二 右捜索差押調書および捜索差押にかかる麻薬に対する鑑定書の証拠能力
裁判要旨
一 司法警察官の職務を行う麻薬取締官が麻薬不法譲渡罪の被疑者を緊急逮捕すべくその自宅に赴いたところ、被疑者が他出中であつたが、帰宅次第逮捕する態勢をもつて同人宅の捜索を開始し、麻薬を押収し、捜索の殆んどを終る頃帰宅した同人を適法に緊急逮捕した本件の場合の如く、(判文参照)、捜索差押が緊急逮捕に先行したとはいえ、時間的にはこれに接着し、場所的にも逮捕の現場でなされたものであるときは、その捜索差押を違憲違法とすべき理由はない。 二 右麻薬取締官作成の右捜索差押調書および捜索差押にかかる右麻薬に対する鑑定書につき、被告人および弁護人が第一審公判廷において、これを証拠とすることに同意し、意義なく適法な証拠調を経たときは、右各書面は、捜索差押手続の違法であつたかどうかにかかわらず証拠能力を有する。
解説
事案
昭和30年10月11日午後8時30分頃、司法警察官の職務を行う麻薬取締官ら4名は、路上の職務質問で麻薬を所持していたAを現行犯逮捕した。続いて、麻薬の入手先であるBを麻薬不法譲渡の被疑事実で緊急逮捕しようと、午後9時30分頃B宅に赴いた。Bは外出中であった。取締官らは帰宅次第逮捕する態勢のまま捜索を始め、麻薬の包紙に関係ある雑誌と麻薬を押収した。捜索がほぼ終わる頃にBが帰宅したため、午後9時50分頃に適式に緊急逮捕し、直ちに逮捕状を請求して発付を受けた。
第一審は、押収麻薬に関する捜索差押調書と鑑定書を、B宅での麻薬所持の自白の補強証拠とした。これらの書面は、第一審公判で被告人・弁護人が証拠とすることに同意し、異議なく証拠調べを経たものである。
原審は、捜索差押えを違法・違憲とし、押収物と調書等の証拠利用は禁止されるとした。その理由は次の2点である。
- 220条による捜索差押えは逮捕着手後に開始することを要する。
- 本件は被疑事実と別の麻薬所持(余罪)の証拠保全のためになされた。
検察官が上告した。
争点
- 緊急逮捕に着手する前、被疑者の不在中に行った無令状の捜索差押えは、刑訴法220条1項(「逮捕する場合において」「逮捕の現場で」)に当たり、憲法35条に反しないか
- 刑訴法220条1項の「必要があるとき」の意義
- 捜索差押手続に違法の疑いがある場合、被告人側が証拠とすることに同意した捜索差押調書・鑑定書の証拠能力
判旨
原判決を破棄し、差し戻した。
- 「逮捕する場合において」:単なる時点よりも幅のある「逮捕する際」をいう。逮捕との時間的接着は必要だが、逮捕着手時の前後関係は問わない。
- 「逮捕の現場で」:場所的同一性を意味するにとどまる。
- 被疑者不在の場合:被疑者が外出不在でも、帰宅次第緊急逮捕する態勢の下で捜索差押えがなされ、これと時間的に接着して逮捕がなされる限り、緊急逮捕する場合にその現場でなされたものといえる。
- 「必要があるとき」:捜索差押えが当該逮捕の原由たる被疑事実に関する証拠物件を収集保全するためになされ、その目的の範囲内と認められれば、要件に適合する。
- 本件への当てはめ:捜索差押えは逮捕に先行したが、時間的に接着し、場所的にも逮捕の現場と同一であり、必要の限度内である。したがって違憲・違法ではない。
- 書面の証拠能力:被告人・弁護人が第一審で証拠とすることに同意し、異議なく適法な証拠調べを経た捜索差押調書・鑑定書は、捜索差押手続が違法であったかどうかにかかわらず証拠能力を有する。
判決文から
「「逮捕する場合において」と「逮捕の現場で」の意義であるが、前者は、単なる時点よりも幅のある逮捕する際をいうのであり、後者は、場所的同一性を意味するにとどまるものと解するを相当とし」
220条の2つの文言の解釈規範
「前者の場合は、逮捕との時間的接着を必要とするけれども、逮捕着手時の前後関係は、これを問わないものと解すべきであつて」
逮捕前の捜索も可とする核心部分
「緊急逮捕のため被疑者方に赴いたところ、被疑者がたまたま他出不在であつても、帰宅次第緊急逮捕する態勢の下に捜索、差押がなされ、且つ、これと時間的に接着して逮捕がなされる限り」
不在中の捜索が許される条件
「令状によることなくその逮捕に関連して必要な捜索、押収等の強制処分を行なうことを認めても、人権の保障上格別の弊害もなく、且つ、捜査上の便益にも適なうことが考慮されたによるもの」
憲法35条が令状主義の例外を認める根拠
「当該逮捕の原由たる被疑事実に関する証拠物件を収集保全するためになされ、且つ、その目的の範囲内と認められるものである以上」
「必要があるとき」の判断基準
「右各書面は、捜索、差押手続の違法であつたかどうかにかかわらず証拠能力を有するものであつて」
同意書面の証拠能力についての判断
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
