最判昭和36年10月10日
盗品の売却あっせんを頼まれた者が売却代金を着服すれば、委託者に返還請求権がなくても横領罪が成立するとした
出題:司法R1・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和33(あ)319 賍物牙保、横領
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第15巻9号1580頁
- 参照法条
- 刑法256条,刑法252条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
賍物の牙保者がその売却代金を着服した場合と横領罪の成否。
裁判要旨
窃盗犯人から賍物の牙保を依頼されてその交付を受けた牙保者が、その売却代金をほしいままに着服した場合は、横領罪が成立する。
解説
事案
窃盗犯人であるA(第一審相被告人)が、盗品(当時の用語で「賍物」)の売却のあっせん(「牙保」)を被告人に頼み、その物を被告人に渡した。被告人はこれを売却し、その売却代金をほしいままに着服した。被告人は賍物牙保と横領で起訴された。
原審(福岡高裁)は、売却代金の着服について横領罪の成立を認めた。弁護人は上告し、大審院判決を引いて次のように主張した。窃盗犯人Aは、被告人に対して売却代金の返還を民法上請求できない。したがって横領罪は成立しない。
争点
- 窃盗犯人から盗品の売却あっせんを頼まれた者が、その売却代金を着服した場合に横領罪(刑法252条1項)が成立するか
- 横領罪の客体であるためには、物を渡した者(給付者)が犯人に対して民法上の返還請求権を持つことが必要か
判旨
上告棄却。横領罪の成立を認めた。
- 規範:刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人が占有する他人の物であれば足りる。物を渡した者が、民法上犯人に対して返還を請求できることは要件ではない。
- 当てはめ:窃盗犯人Aが、牙保者である被告人に対して売却代金の返還を請求できないとしても、被告人は自己以外の者のために代金を占有している。その占有中に代金を着服した以上、横領の罪責を免れない。
答案では、例えば「横領罪の客体は自己の占有する他人の物であれば足り、委託者が民法上返還請求権を有することを要しない」と書ける。
判決文から
「刑法二五二条一項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以つて足るのであつて、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない」
返還請求権を要件としない旨の規範部分
「所論金員は、窃盗犯人たる第一審相被告人Aにおいて、牙保者たる被告人に対しその返還を請求し得ないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない」
盗品売却代金への当てはめ部分
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