苫米地事件
衆議院の解散は高度に政治性のある統治行為であり、訴訟の前提問題としても裁判所の審査権の外にあるとした判例
出題:司法H24・司法R7・予備H24・予備R5・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和30(オ)96 衆議院議員資格並びに歳費請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第14巻7号1206頁
- 参照法条
- 憲法76条,憲法81条,憲法7条,憲法69条,裁判所法3条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
衆議院解散の効力に関する裁判所の審査権限。
裁判要旨
衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にある。
解説
事案
昭和27年8月28日に衆議院が解散された。当時衆議院議員であった上告人は、この解散は憲法に違反し無効であるから議員の身分を失っていないと主張した。そして、同年9月分から任期満了の昭和28年1月分までの歳費合計28万5千円の支払を求めて出訴した。つまり、解散の無効を前提問題とする歳費請求訴訟である。
解散無効に関する主要な争点は2つである。
- 本件解散は、憲法69条の場合(内閣不信任決議の可決等)ではないのに、憲法7条のみに依拠して行われたから無効か
- 憲法7条所定の内閣の助言と承認が適法になされたか
原審(東京高裁)は、本件解散は憲法7条に依拠したもので憲法に適合し、内閣の助言と承認も適法になされたとして、請求を棄却した。上告人が上告した。
争点
- 衆議院の解散の効力(7条のみに依拠した解散の合憲性、内閣の助言と承認の瑕疵)は、裁判所の審査権に服するか
- 解散の効力が訴訟の前提問題として争われる場合にも審査権が及ばないか
- 審査権が及ばない根拠は何か(明文のない制約の性格)
判旨
上告棄却。
規範:直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、たとえ法律上の争訟となり、その有効無効の判断が法律上可能であっても、裁判所の審査権の外にある。その判断は、主権者たる国民に政治的責任を負う政府・国会等の政治部門に委ねられ、最終的には国民の政治判断に委ねられる。この制約は三権分立の原理に由来する。明文の規定はないが、司法権の憲法上の本質に内在する制約である。
あてはめ:衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為である。したがって、7条に依拠した解散が憲法の条章の適用を誤ったか、内閣の助言と承認に瑕疵があったかといった有効無効の審査は、司法裁判所の権限の外にある。この理は、解散が訴訟の前提問題として主張される場合も同様である。
政府の見解は、69条の場合でなくとも7条により有効に解散できるとするものである。裁判所はこれを否定して本件解散を無効とすることはできない。よって、解散無効を前提とする請求は排斥される。
判決文から
「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり」
統治行為論の規範。法律上の争訟性を前提に審査を否定
「特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものである。」
自制説ではなく内在的制約説に立つことを示す
「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべき」
解散を統治行為とするあてはめ部分
「この理は、本件のごとく、当該衆議院の解散が訴訟の前提問題として主張されている場合においても同様であつて、ひとしく裁判所の審査権の外にありといわなければならない。」
前提問題としての主張にも審査権が及ばない
「解散は憲法八一条にいう「処分」であつて、正に裁判所の違憲審査権の対象であるからである。」
小谷・奥野意見。統治行為論への批判
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