最判昭和35年6月17日
建物を未登記のまま譲渡した元所有者は、仮処分のための嘱託登記で名義人とされても、建物収去義務を負わない。
出題:司法H29・予備H24
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和31(オ)119 建物収去土地明渡請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第14巻8号1396頁
- 参照法条
- 民法176条,民法177条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
敷地不法占有と家屋収去請求の相手方。
裁判要旨
仮処分申請に基き、裁判所の嘱託により家屋所有権保存登記がなされている場合であつても、仮処分前に家屋を未登記のまま第三者に譲渡しその敷地を占拠していない右保存登記名義人に対し、敷地所有者から敷地不法占有を理由として家屋収去請求をすることは許されない。
解説
事案
被上告人Yは、他人所有の土地の上に建物を所有していた。Yは昭和28年3月26日、この建物を訴外緑川に譲渡したが、登記はされないままだった。同年9月、上告人Xが本件土地の所有権を取得した。同年11月4日、XはYを相手方として本件建物の処分禁止の仮処分命令を得た。その登記をするため、東京地裁の嘱託によりY名義の所有権保存登記がされた。この保存登記はYの関知しないものである。
Xは、Yが権原なく建物を所有して土地を不法に占拠しているとして、土地所有権に基づく建物収去土地明渡しと、所有権侵害を理由とする損害賠償を求めた。原審は、Yが建物の所有者でない以上、登記名義人であるか否かを問わず請求はできないとして、Xの請求を退けた。Xが上告した。
争点
- 土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求(物権的妨害排除請求)の相手方は誰か
- 未登記建物の譲渡後に、仮処分のための裁判所の嘱託で譲渡人名義の保存登記がされた場合、その登記名義人は建物収去義務を負うか
- 敷地所有者は、建物所有権の変動について民法177条の「第三者」にあたるか(少数意見の論点)
判旨
上告棄却(Xの請求を認めない)。
- 規範:土地所有権に基づく物上請求権の訴訟では、現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者を被告としなければならない。
- あてはめ:Yは仮処分より前、しかもXの土地取得より前に、建物を未登記のまま第三者に譲渡しており、現在は所有者ではない。Yには建物の管理処分の権能もなく、事実上支配してもおらず、「登記ある地上家屋の所有者」にもあたらない。Y名義の保存登記は、Xの仮処分申請に基づく裁判所の嘱託によるもので、Yは関知していない。したがって、Yに対して建物収去を求めることは許されない。
- 損害賠償:YはXの土地所有権取得前に建物を譲渡しているから、所有権侵害を理由とする損害賠償請求も理由がない。
判決文から
「右のような土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては、現実に家屋を所有することによつて現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである。」
建物収去請求の相手方に関する規範部分
「被上告人は現在においては右家屋に対しては何等管理処分等の権能もなければ、事実上これを支配しているものでもなく、また、登記ある地上家屋の所有者というにもあたらない。」
相手方性を否定したあてはめの核心
「建物所有権の変動について、その敷地の所有者は民法一七七条の第三者に該当するものと解する」
少数意見の対抗要件構成の出発点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
