最判昭和35年11月1日
解除による原状回復義務が履行不能になった場合の損害賠償請求権の消滅時効は、解除の時から進行するとした判例
出題:司法H29・司法R7・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和33(オ)599 物件引渡等請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第14巻13号2781頁
- 参照法条
- 民法166条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
契約解除に基く原状回復の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点。
裁判要旨
契約解除に基く原状回復義務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、契約解除の時から進行する。
解説
事案
商事契約が解除され、その解除によって特定物を返還する原状回復義務が生じた。ところが、この返還義務は履行不能となり、原状回復に代わる損害賠償義務が問題となった。
争点は、その損害賠償請求権の消滅時効がいつから進行するかである。この債務が商事債務として商事の短期消滅時効に服することを前提に、起算点が争われた。
原審(札幌高裁)は、時効は本来の債務の履行を請求しうる時から進行すると判断した。これに対して上告がされたが、最高裁は上告を棄却した。
争点
- 商事契約の解除による原状回復義務と、その履行不能による損害賠償義務は、商事債務か
- 原状回復義務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点はいつか(解除時か、履行不能時か)
判旨
上告棄却。
- 商事契約の解除による原状回復義務(本件では特定物の返還義務)は商事債務である。その履行不能による損害賠償義務も同様に商事債務である。
- 損害賠償義務は、本来の債務の物体が変更したにとどまり、債務の同一性は変わらない。
- したがって、原状回復義務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務(原状回復義務)の履行を請求しうる時から進行する。
裁判要旨の言い方では、契約解除の時から進行する。
答案上の規範は次のとおり。「履行不能による損害賠償請求権は本来の債務と同一性を有するから、その消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行する。解除による原状回復義務の場合、それは解除の時である。」
判決文から
「右損害賠償義務は本来の債務の物体が変更したに止まり、その債務の同一性に変りはないのであるから」
債務同一性説が理由づけの核心
「右債務の消滅時効は本来の債務の履行を請求し得る時から進行を始めるものと解すべきである。」
起算点の規範そのもの
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