伝播性の理論(伝播可能性説)
特定少数への摘示でも不定多数に伝わりうれば公然性を認め、真実の証明がなければ誤信しても免責しないとした判例
出題:司法H24・司法H29・司法R2・司法R4・予備R2・予備R4・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和33(あ)2698 名誉毀損
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第13巻5号641頁
- 参照法条
- 刑法230条,刑法230条ノ2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 名誉毀損罪の成立する事例 二 刑法第二三〇条ノ二にいう「真実ナルコトノ証明アリタルトキ」に当らない事例
裁判要旨
一 Xが、確証もないのに、YにおいてX方庭先の燻炭囲の菰に放火したものと思い込み、X方でYの弟Aおよび火事見舞に来た村会議員Bに対し、またY方でその妻C、長女Dおよび近所のE、F、G等に対し、問われるままに、「Yの放火を見た」、「火が燃えていたのでYを捕えることはできなかつた」旨述べたときは(その結果、本件ではYが放火したという噂が村中に相当広まつている。)不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示しYの名誉を毀損したものとして名誉毀損罪が成立する。 二 右の場合、XがY(未起訴)において放火したものと誤信していたとしても、記録およびすべての証拠上、Yが右放火の犯人であることが確認できないときは、刑法第二三〇条ノ二にいう「真実ナルコトノ証明」がなされなかつたものとして、Xは名誉毀損の罪責を免れることができない。
解説
事案
Xは、確証もないのに、YがX方庭先の燻炭囲の菰に放火したと思い込んだ。そして、問われるままに次の者らに対し、「Yの放火を見た」「火が燃えていたのでYを捕えることはできなかつた」旨を述べた。
- X方で、Yの弟Aと、火事見舞に来た村会議員B
- Y方で、Yの妻C、長女D、近所のE・F・Gら
その結果、Yが放火したという噂が村中に相当広まった。Yは起訴されていない。
第一審はXを名誉毀損罪で有罪とし、原審(仙台高裁秋田支部)もこれを維持した。弁護人は、公然性の解釈が憲法21条・22条・35条に違反すること、判例に違反すること、Xは放火を誤信していたにすぎないことなどを主張して上告した。
争点
- 特定少数人に対し、質問に答える形で事実を摘示した場合に、刑法230条1項の「公然」の要件を満たすか
- 摘示事実が真実であると誤信していたが、証拠上真実と確認できない場合に、刑法230条の2による免責が認められるか
判旨
上告棄却(名誉毀損罪成立)。
- 公然性:被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、刑法230条1項の「公然」事実を摘示したといえる。摘示が質問への答えとしてされたかどうかは、犯罪の成否に影響しない。このように解しても、憲法21条等の保障する自由を侵害しない。
- 真実性の証明:記録及びすべての証拠によっても、摘示された人物が放火犯人であると確認できない以上、刑法230条の2の「真実ナルコトノ証明」はなされていない。したがって、被告人が真実と誤信していたとしても、名誉毀損の刑責を免れない。
答案上は、相手方が特定少数人でも、そこから不特定又は多数人に伝播する可能性があれば公然性が認められる、という形で用いられる(伝播性の理論)。
判決文から
「被告人は不定多数の人の視聴に達せしめ得る状態において事実を摘示したものであり、その摘示が質問に対する答としてなされたものであるかどうかというようなことは、犯罪の成否に影響がない」
伝播性の理論の根拠となる公然性の判断部分
「本件記録およびすべての証拠によつても、Hが本件火災の放火犯人であると確認することはできないから、被告人についてはその陳述する事実につき真実であることの証明がなされなかつたものというべく」
証明がなければ誤信しても免責されないとした部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
