森林組合事件
森林組合長らが使途の限定された政府貸付金を町に貸し付けた行為に、不法領得の意思を認めて業務上横領罪の成立を肯定した判例
出題:司法H25・司法H29
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和31(あ)1761 業務上横領
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 刑集 第13巻2号101頁
- 参照法条
- 刑訴法394条,刑訴法400条但書,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)2条2号,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)3条4項2号,農林漁業資金融通法(昭和26年法律105号)4条1項,刑法253条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 控訴審が破棄自判する場合と第一審において取り調べた証拠 二 農林漁業資金融通法による政府貸付金について業務上横領罪の成立する場合
裁判要旨
一 控訴審が事実の取調をなし第一審の無罪判決を破棄して有罪を認定するにあたつては、第一審において取り調べた証拠は、控訴審で再び証拠調をし直すことを必要とせず、そのまま証拠能力を認めて判決の基礎とすることができる。 二 社団法人たる森林組合を代表し組合業務一切を掌理する組合長および組合長を補佐し組合業務を執行する組合常務理事が、農林漁業資金融通法(昭和二六年法律第一〇五号)の規定により政府から組合に対し組合員に造林資金として転貸交付する目的をもつて貸付され、右転貸資金以外他のいかなる用途にも流用支出することのできない金員を組合のため業務上保管中共謀の上その保管方法と使途の規正に反し、もつぱら第三者たる地方公共団体の利益を図り、その諸経費支払資金に充てしめるため、ほしいままにこれに貸付支出したときは、対政府関係における融資条件違反の罰則の有無にかかわらず、また、たとえその金員が組合の所有に属し、右第三者に対する貸付が組合名義をもつて処理されているとしても、横領罪の成立に必要な不法領得の意思ありと認めて妨げなく、業務上横領罪が成立する。
解説
事案
社団法人であるE森林組合の組合長A(組合業務一切を掌理)と常務理事B(組合長を補佐し業務を執行)は、農林漁業資金融通法に基づき政府から組合に貸し付けられた175万円を、組合のため業務上保管していた。この金員は、組合員のうち造林事業を営む者に転貸するためのもので、造林資金以外には一切流用できないものであった。
- (一)AとBは共謀し、年末の諸経費の支払資金に窮していたa町の要請を受けて、上記金員の一部を組合名義で同町に貸し付けた。
- (二)また、被告人らが個人で営むカラ松球果採取事業の借入金の元利返済に、40万円余りを充てた。
いずれの支出も組合役員会の決議の趣旨に反していた。監事Fの承認はあったが、これは監事の権限外の行為であった。第一審は無罪とした。控訴審は、自ら証人尋問などの事実の取調べを行ったうえで第一審判決を破棄し、Aについての春季造林補助金横領の事実(公訴事実第二)も含めて有罪とした。被告人らが上告した。
争点
- 使途が規正された政府貸付金を法人の機関が目的外に支出した場合に、業務上横領罪(刑法253条)が成立するか
- 法人名義で第三者に貸し付けた場合でも、不法領得の意思を認めうるか(横領罪と背任罪の区別)
- 控訴審が無罪判決を破棄自判する場合に、第一審で取り調べた証拠を再度取り調べる必要があるか(刑訴法394条、400条但書)
判旨
業務上横領罪の成立を肯定した(Bの上告は棄却)。
- 政府貸付金を目的外に使うこと自体は、政府との外部関係では貸付条件違反として一時償還の問題を生じるにとどまり、それだけで直ちに横領罪となるのではない。
- しかし、保管を委託された被告人らと委託者である組合との内部関係では、金員流用の目的・方法等の処分行為の態様によって業務上横領罪の成否が問題となる。
- 本件の支出は、専らa町または被告人ら個人の利益を図るものであった。しかも、正当な権限に基づかず、ほしいままに被告人ら個人の計算でなされた。これは保管方法と使途の限定された他人所有の金員について、その所有権そのものを侵奪する行為である。
- したがって、金員が組合の所有に属し、貸付が組合名義で処理されていても、不法領得の意思を認めてよく、背任罪の成否を論じる余地はない。
手続面では、控訴審が自ら事実の取調べをしたうえで無罪判決を破棄し有罪とする場合、第一審で取り調べた証拠は再度証拠調べをせずに判決の基礎とできる。ただし、事実の取調べを全くしていない公訴事実第二についてまで有罪とした点は刑訴法400条但書に違反するとして、Aに関する部分を破棄・差し戻した。
判決文から
「金員保管の委託を受けている被告人らと委託者本人である組合との内部関係においては、金員流用の目的、方法等その処分行為の態様如何により業務上横領罪の成否を論ずる余地のあることは当然といわなければならない。」
外部関係と内部関係を分け、処分の態様で判断する枠組み
「組合の利益のためにする資金保管の一方法とは到底認め難く」
本人(組合)のための処分でないことを認定した部分
「手続違反的な形式的違法行為に止まるものではなくて」
単なる法令・内規違反の支出とは区別した点
「保管方法と使途の限定された他人所有の金員につき、その他人の所有権そのものを侵奪する行為に外ならない」
不法領得の意思を肯定した核心の理由
「第一審において証拠能力のあつた証拠は、再び証拠調をし直すことを必要とせず、控訴審においてその儘証拠能力を認めて判決の基礎となし得ることは同三九四条に明定されており」
控訴審での第一審証拠の扱い(刑訴法394条)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
