砂川事件
駐留米軍は憲法9条2項の「戦力」に当たらず、安保条約は一見極めて明白に違憲でない限り司法審査権の範囲外とした判例
出題:司法H24・司法H26・司法H30・司法R1・司法R3・司法R5・司法R6・司法R8・予備H23・予備H24・予備H30・予備R5・予備R6・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和34(あ)710 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 刑集 第13巻13号3225頁
- 参照法条
- 刑訴法35条,刑訴規則26条,憲法前文,憲法9条1項,憲法9条2項,憲法98条2項,憲法9条,憲法73条3号,憲法76条3項,憲法81条,憲法98条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約前文,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約1条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定2条1,日本とアメリカ合衆国との間の安全保障条約3条に基く行政協定に伴う刑事特別法2条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 刑訴法第三五条但書の特別の事情がなくなつたものと認められた事例 二 憲法第九条の立法趣旨 三 憲法第九条第二項の戦力不保持の規定の立法趣旨 四 憲法第九条はわが国の自衛権を否定するか 五 憲法はわが国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするための自衛の措置をとることを禁止するか 六 憲法は右自衛のための措置を国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定し、他国にわが国の安全保障を求めることを禁止するか 七 わが国に駐留する外国軍隊は憲法第九条第二項の「戦力」にあたるるか 八 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下安保条約と略す。)と司法裁判所の司法審査権 九 安保条約がいわゆる前提問題となつている場合と司法裁判所の司法審査権 一0 安保条約は一見明白に違憲と見められるか 一一 特に国会の承認を経ていない安保条約第三条に基く行政協定(以下行政協定と略す。)の合憲性
裁判要旨
一 刑訴規則第二五四条の跳躍上告事件において、審判を迅速に終結せしめる必要上、被告人の選任すべき弁護人の数を制限したところ、その後公判期日および答弁書の提出期日がきまり、かつ弁護人が公判期日に弁論をする弁護人の数を自主的に〇人以内に制限する旨申出たため、審理を迅速に終結せしめる見込がついたときは、刑訴第三五条但書の特別の事情はなくなつたものと認めることができる。 二 憲法第九条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤つて犯すに至つた軍国主義的行動を反省し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであつて、前文および第九八条第二項の国際協調の精神と相まつて、わが憲法の特色である平和主義を具体化したものである。 三 憲法第九条第二項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となつて、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第一項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。 四 憲法第九条はわが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。 五 わが国が、自国の平和と安全とを維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を執り得ることは、国家固有の権能の行使であつて、憲法は何らこれを禁止するものではない。 六 憲法は、右自衛のための措置を、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事措置等に限定していないのであつて、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。 七 わが国が主体となつて指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても憲法第九条第二項の「戦力」には該当しない。 八 安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。 九 安保条約(またはこれに基く政府の行為)が違憲であるか否かが、本件のように(行政協定に伴う刑事特別法第二条が違憲であるか)前提問題となつている場合においても、これに対する司法裁判所の審査権は前項と同様である。 一0 安保条約(およびこれに基くアメリカ合衆国軍隊の駐留)は、憲法第九条、第九八条第二項および前文の趣旨に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは認められない。 一一 行政協定は特に国会の承認を経ていないが違憲無効とは認められない。
解説
事案
被告人らは、日米安全保障条約3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法2条により立入りが禁止されている、米軍が使用する施設(砂川町所在の立川飛行場)内に、正当な理由なく立ち入ったとして起訴された(侵入は、何者かが有刺鉄線の柵を壊した箇所から行われた)。
- 原審の東京地裁は、次のように判断して被告人らを無罪とした。米軍の駐留を許容することは、憲法9条2項前段が禁じる戦力の保持に当たる。そのため、駐留米軍の施設の平穏を軽犯罪法1条32号より重い刑で特に保護する刑事特別法2条には合理的理由がなく、憲法31条に違反し無効である。
- 検察官は、刑訴規則254条による跳躍上告をした。
最高裁大法廷は原判決を破棄し、東京地裁に差し戻した。
争点
- 憲法9条は自衛権を否定するか、他国に安全保障を求めることを禁じるか
- わが国に駐留する外国軍隊は憲法9条2項の「戦力」に当たるか
- 安保条約のような高度の政治性を有する条約に司法審査権が及ぶか(前提問題となっている場合を含む)
- 安保条約・米軍駐留は一見極めて明白に違憲無効といえるか
- 国会の承認を経ていない行政協定は違憲無効か
判旨
原判決破棄・差戻し。
- 自衛権:憲法9条は主権国として持つ固有の自衛権を否定しない。わが国が自国の平和と安全を維持し、存立を全うするために必要な自衛のための措置をとることは、国家固有の権能の行使である。その措置は国連の安全保障理事会等の軍事措置に限られず、他国に安全保障を求めることも禁じられない。
- 戦力:9条2項が保持を禁止する戦力とは、わが国が主体となって指揮権・管理権を行使し得る戦力、すなわちわが国自体の戦力をいう。外国の軍隊は、わが国に駐留していても戦力に当たらない。なお、自衛のための戦力の保持まで禁じるかは判断していない。
- 司法審査:安保条約は、主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有する。その違憲性の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない。したがって、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外にある。この判断は第一次的には内閣・国会に、終局的には主権者である国民の政治的批判に委ねられる。安保条約の違憲性が前提問題となっている場合も同じである。
- あてはめ:米軍駐留は一見極めて明白に違憲無効とは認められない。行政協定は、国会の承認を経た安保条約3条の委任の範囲内にあるから、国会の承認を経ていなくても違憲無効ではない。
判決文から
「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。」
9条が自衛権を否定しないことを明示
「結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。」
「戦力」の定義と外国軍隊の非該当性
「同条二項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として」
自衛のための戦力の可否は判断留保
「その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。」
司法審査を控える実質的理由
「右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従つて、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであつて」
答案で使う規範の中核部分
「第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねらるべきものであると解するを相当とする。」
判断の帰属先(内閣・国会→国民)
「このことは、本件安全保障条約またはこれに基く政府の行為の違憲なりや否やが、本件のように前提問題となつている場合であると否とにかかわらないのである。」
前提問題でも審査権の範囲は同じ
「憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に適合こそすれ、これらの条章に反して違憲無効であることが一見極めて明白であるとは、到底認められない。」
留保部分へのあてはめの結論
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
