最判昭和33年9月9日
自己の過失で生じた火を、容易に消せるのに焼損を認容して放置し立ち去った者に、不作為による現住建造物等放火罪を認めた判例
出題:司法H27・司法R3
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和31(あ)3929 放火
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第12巻13号2882頁
- 参照法条
- 刑法108条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
不作為による放火罪の成立する事例。
裁判要旨
自己の過失により事務室内の炭火が机に引火し、燃焼しはじめているのを仮睡から醒めて発見した者が、そのまま放置すれば右事務所を焼燬するに至ることを認識しながら、自己の失策の発覚をおそれる等のため、右結果の発生を認容して何らの措置をすることなくその場から逃げ去つたときは、不作為による放火の責任を負うべきである。
解説
事案
被告人は、営業所事務室内の自席の木机の下に、炭火がよくおこった木製火鉢を置いた。机のすぐ近くには、原符約3万7000枚を詰めたボール箱3個があった。被告人は、炭火を安全な場所に移す、炭火を弱めるといった容易な引火防止措置をとらず、他に誰もいない事務室を離れ、営業所内の工務室で休憩・仮睡した。その間に炭火の過熱で原符に引火し、木机に延焼した。
被告人は仮睡から醒めて事務室に入り、燃焼に気づいた。自ら消火するか、宿直員3名を呼び起こして協力を得れば、火勢や消火設備からみて容易に消火できる状態であった。しかし被告人は、放置すれば営業所建物に延焼し焼燬に至ることを認識しながら、自己の失策の発覚をおそれるなどして、建物の焼燬を認容しつつ玄関から表に出て立ち去った。その結果、宿直員らが現在する営業所建物1棟のほか現住家屋6棟等が焼燬した。第一審・原審は刑法108条の放火罪の成立を認め、最高裁は上告を棄却した。
争点
- 自己の過失により出火させた者に、建物への延焼を防ぐ消火義務(作為義務)が認められるか
- 不作為による放火罪の成立に、既発の火力を利用する意思まで必要か。焼損結果の認容で足りるか
- 不作為による放火として刑法108条の現住建造物等放火罪が成立するか
判旨
上告棄却。不作為による現住建造物等放火罪(刑法108条)が成立する。
規範
- 作為義務:自己の過失行為で物件を燃焼させた者(本件ではさらに残業職員)は、その物件を消火するのはもちろん、放置すれば火勢が建物に燃え移り焼燬に至ることを認めた場合には、建物に燃え移らないよう消火する義務を負う。
- 実行行為と故意:現場で燃焼を目撃しながら、既発の火力で建物が焼燬されることを認容する意思をもって、あえて義務である必要かつ容易な消火措置をとらない不作為は、建物についての放火行為にあたる。
答案では「先行行為(過失による出火)等に基づく消火義務+消火の容易性+焼損の認容」で不作為の放火を認める、と整理できる。
判決文から
「被告人は自己の過失行為により右物件を燃焼させた者(また、残業職員)として、これを消火するのは勿論」
作為義務の根拠を先行行為と職務上の地位に求めた部分
「火勢、消火設備の関係から容易に消火しうる状態であつたのに」
作為の容易性・可能性の認定
「その既発の火力により右建物が焼燬せられるべきことを認容する意思をもつてあえて被告人の義務である必要かつ容易な消火措置をとらない不作為により建物についての放火行為をなし、よつてこれを焼燬したものであるということができる。」
認容で足り、利用意思を独立の要件としない核心部分
「引用の大審院判例の趣旨も本判決の趣旨と相容れないものではなく」
大審院判例との関係(判例違反を否定)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
