苺ジャム事件
和解の前提とされた代物弁済目的物(ジャム)の品質に錯誤があれば和解は要素の錯誤で無効となり、瑕疵担保規定は排除されるとした判例
出題:司法H23・司法H24・司法H25・司法H30・司法R2・司法R7・予備H25・予備R4・予備R5・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和32(オ)1171 商品代金請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第12巻9号1492頁
- 参照法条
- 民法696条,民法95条,民法570条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 和解が要素の錯誤によつて無効とされた事例 二 契約の要素に錯誤があつた場合と民法第五七〇条の適用の有無
裁判要旨
一 仮差押の目的となつているジヤムが一定の品質を有することを前提として和解契約をなしたところ、右ジヤムが原判示の如き(原判決理由参照)粗悪品であつたときは、右和解は要素に錯誤があるものとして無効であると解すべきである 二 契約の要素に錯誤があつて無効であるときは、民法第五七〇条の瑕疵担保の規定の適用は排除される
解説
事案
XとYとの間で、商品代金62万9777円50銭の支払義務の有無が争われていた。XYは(X側では、X会社の訴訟代理人が関与して)互いに譲歩してこの争いを止めるため、和解を成立させた。和解の内容は、Yが仮差押えを受けていた本件ジャムを、市場で一般に通用している「特選D印苺ジャム」であることを前提に、一箱当たり3000円(一罐平均62円50銭相当)と見込んで、YからXに代物弁済として引き渡すというものであった。
ところが、本件ジャムは粗悪品であった。原審は、和解に関与したX会社の訴訟代理人の意思表示には要素の錯誤があり、和解は無効であるとして、Xの請求を認容した。
Yは上告し、主に次の点を主張した。
- 錯誤の判断に法令解釈の誤りがある。
- 目的物の瑕疵の問題であるから、瑕疵担保の規定(旧民法570条)によるべきである。
- 和解には実質的確定力がある。
争点
- 和解の前提とされた代物弁済目的物の品質についての錯誤が、和解の要素の錯誤となり和解を無効とするか(民法95条・696条)
- 契約の要素に錯誤がある場合に、瑕疵担保の規定(旧民法570条)の適用が排除されるか(錯誤と瑕疵担保の関係)
- 要素の錯誤により無効な(訴訟上の)和解が実質的確定力を有するか
判旨
上告棄却。判旨は次の3点である。
- 和解と錯誤:争いの目的は支払義務の有無であった。和解は、その争いを止めるため、代物弁済の目的物が一定の品質(市場で通用する特選品)を有することを前提として締結された。その目的物が粗悪品であったときは、和解の意思表示の重要な部分に錯誤があり、和解は要素の錯誤により無効である。
- 錯誤と瑕疵担保:代物弁済の目的物の瑕疵によって契約の要素に錯誤を来している場合、民法の瑕疵担保の規定は排除される(大判大正10年12月15日を参照)。
- 和解の確定力:和解が要素の錯誤により無効である以上、実質的確定力を有しないことは論をまたない。
答案用の規範は、「和解において争いの対象とされず、和解の前提として当事者が予定した事項(給付目的物の品質等)に錯誤があるときは、和解の確定効(696条)は及ばず、錯誤の主張が認められる」という形で書ける。
判決文から
「仮差押にかかる本件ジヤムを市場で一般に通用している特選D印苺ジヤムであることを前提とし」
品質が和解の「前提」とされた点が錯誤肯定の鍵
「本件ジヤムは、原判示のごとき粗悪品であつたから、本件和解に関与した被控訴会社の訴訟代理人の意思表示にはその重要な部分に錯誤があつた」
前提事項の錯誤を要素の錯誤と認めた核心部分
「このような場合には、民法瑕疵担保の規定は排除されるのであるから」
錯誤が瑕疵担保に優先する(錯誤優先)との立場
「原判決は、本件和解は要素の錯誤により無効である旨判示しているから、所論のごとき実質的確定力を有しないこと論をまたない。」
無効な和解には確定力がないとした民訴上の論点
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
