練馬事件
共謀共同正犯の成立要件と順次共謀を示し、共犯者の自白は憲法38条3項の「本人の自白」に当たらないとした大法廷判決
出題:司法H22・司法H28・司法R4・司法R5・司法R7・予備H26・予備H28・予備H30・予備R4・予備R5・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和29(あ)1056 傷害致死、暴行、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、窃盜
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第12巻8号1718頁
- 参照法条
- 刑法60条,憲法31条,憲法38条2項,憲法38条3項,刑訴法335条,刑訴法335条1項,刑訴法317条,刑訴法318条,刑訴法319条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 いわゆる共謀共同正犯の成立要件 二 実行行為に関与しない共謀者の刑責と憲法第三一条 三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」であるか 四 共謀の判示方法 五 憲法第三八条第二項の法意 六 憲法第三八条第三項の法意 七 被告人本人との関係における共犯者の犯罪事実に関する供述と、憲法第三八条第三項にいわゆる「本人の自白」 八 数人間の順次の共謀と共謀共同正犯の成立
裁判要旨
一 いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない 二 いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法第三一条に違反しない 三 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない 四 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない 五 憲法第三八条第二項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである 六 憲法第三八条第三項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである 七 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法三八条二項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白と同一視し、またはこれに準ずるものではない 八 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない
解説
事案
共産党員の政治闘争の一環として行われた暴行・傷害致死等の事件である。原判決の認定によれば、被告人Bは昭和26年12月25日夕、被告人A方を訪れた。そして、北部地区の党員らが協力して翌26日夜に二班に分かれ、印藤巡査およびCを殴打することを伝え、参加人員・集合場所・実行方法等を指示して共謀した。指示を受けたAは、順次ほかの各被告人と共謀していった。
第一審は、共謀を否認した被告人については共同被告人の自白を独立の証拠とした。共謀を認めた被告人については各自の自白を相互に補強証拠とした。そのほかの点は証人の供述、鑑定書、押収品等を総合して犯罪事実を認定した。原判決はこれを維持したが、その冒頭で、共謀は「本来の罪となるべき事実に属さない」と述べていた。
弁護人は、次の点を主張して上告した。
- 共謀共同正犯は憲法31条に違反する。
- 共犯者の自白のみで否認する被告人を有罪とすることは憲法38条3項に違反する。
- 順次共謀を認めることは判例に違反する。
争点
- 共謀共同正犯の成立要件と、実行行為に関与しない共謀者を処罰することの憲法31条適合性
- 「共謀」は罪となるべき事実か、その証明の方法(厳格な証明の要否)
- 判決における共謀の判示の程度(日時・場所・内容の詳細の要否)
- 憲法38条2項・3項の法意
- 共犯者(共同被告人)の供述は憲法38条3項の「本人の自白」に当たるか
- 順次共謀による共謀共同正犯の成否
判旨
上告棄却。判断は次のとおりである。
- 共謀共同正犯の成立要件:二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した事実が必要である。この共謀に参加した以上、直接実行行為に関与しない者も、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味で共同正犯の刑責を負う。実行行為への関与の有無や分担・役割は刑責の成立を左右しない。こう解しても憲法31条に違反しない。
- 共謀の証明と判示:共謀は「罪となるべき事実」であり、厳格な証明を要する。ただし判示は、共謀が上記の趣旨で成立したことが明らかになれば足り、謀議の日時・場所・内容の詳細(実行方法、各人の分担役割等)まで具体的に示す必要はない。
- 憲法38条2項・3項:2項は、強制等による自白の証拠能力を否定した規定である。3項は自白の証拠能力を制限するものではなく、証明力に対する自由心証を制限し、補強証拠を要求する規定である。
- 共犯者の供述:共犯者・共同被告人の供述は「本人の自白」と同視されない。証拠能力がある限り、独立・完全な証明力を持つ。
- 順次共謀:順次共謀が行われた場合、関係者全員の間に共謀が成立する。同一場所に会して一個の共謀をする必要はない。
判決文から
「共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。」
共謀共同正犯の成立要件の基本規範
「直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。」
非実行者が正犯となる根拠
「ここにいう「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならないから、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない」
共謀は罪となるべき事実で厳格な証明が必要
「共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、被害者その他の純然たる証人とその本質を異にするものではないからである。」
共犯者の自白が本人の自白でない理由
「同一の犯罪について、甲と乙が共謀し、次で乙と丙が共謀するというようにして、数人の間に順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたと解するを相当とする。」
順次共謀による共謀共同正犯の成立
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
