最判昭和32年6月21日
刑法108条の「人」は犯人以外の者を指すとした大審院判例を確認し、共犯でない居住者がいる家屋への放火に108条を適用した判例
出題:司法H23・司法H25
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和29(あ)805 放火、詐欺、横領
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第11巻6号1700頁
- 参照法条
- 刑法108条
解説
事案
被告人らは放火・詐欺・横領で起訴された。第一審は、被告人らが「現にA等の住居に使用する住宅及びこれに接続する工場」を焼燬させたと認定し、刑法108条を適用した。原審(名古屋高裁金沢支部)もこれを維持し、被告人らの放火は犯人以外の者が現に住居に使用する家屋を焼燬したものであって108条に該当することは明らかだとした。
弁護人は上告し、次のように主張した。
- 108条の「人」は犯人以外の者を指すとする大審院判例がある。
- 居住者Aは不作為による放火の共犯である。
- したがって本件家屋は108条の客体にあたらない。
あわせて、捜査段階の供述調書には任意性がないとして憲法38条違反も主張した。
争点
- 刑法108条にいう「人」に犯人自身(共犯者を含む)が含まれるか
- 居住者の一人が共犯と主張される場合に、本件家屋が現住建造物にあたるか
判旨
上告棄却である。
規範:刑法108条にいう「人」とは、犯人以外の者を指す。最高裁は、弁護人が引用した大審院判例のとおりであるとしてこれを確認した。
あてはめ:最高裁は次の2点を示した。
- 第一審判決の「A等」の「等」は、B、C、Dを指すことが記録上明らかである。
- Aを不作為の放火犯とする主張は認められない。
そのため、本件家屋は犯人以外の者が現に住居に使用する建造物であり、108条の適用は正当である。上告趣意は事実誤認の主張にすぎず、上告理由にあたらないとされた。
答案用の規範:「108条の『人』とは犯人以外の者をいい、放火時に犯人以外の者が住居として使用し又は現在する建造物であれば現住建造物にあたる」。
判決文から
「刑法一〇八条にいう「人」とは、犯人以外の者を指称すること所論引用の大審院判例の示すとおりであるが」
108条の「人」の意義を最高裁として確認した部分
「「等」というのは、B、C、Dを指すこと記録上明らかであるばかりでなく、Aを以て不作為の放火犯であるとする所論の肯認し得ないことも亦原判決の示すとおりである」
共犯でない居住者の存在から現住性を肯定したあてはめ
「被告人等の本件放火の所為は犯人以外の者が現に住居に使用する家屋を焼燬したものであつて刑法一〇八条に該当すること明らかである」
原判決の判断として最高裁が引いた108条該当の理由
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