最判昭和32年3月8日
賃料不払で適法に解除された後に賃借人が相殺しても、相殺の遡及効は解除の効力に影響しない
民法弁済・相殺債権の目的・効力賃貸借・使用貸借本試験で 3 問(短答 3・論文 0)
出題:司法H27・司法R5・予備H27
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和30(オ)332 家屋明渡請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第11巻3号513頁
- 参照法条
- 民法506条,民法541条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無
裁判要旨
賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。
解説
事案
賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人ら)の賃料不払を理由に家屋の賃貸借契約を解除し、家屋の明渡しを求めた事案である。
- 賃借人側は、解除の意思表示の後に、賃貸人に対する反対債権を自働債権として賃料債務と相殺する意思表示をした。
- 賃借人側の主張は次の2点である。
- 民法506条2項により、相殺の効力は相殺適状の時に遡る。そうすると解除の時点で賃料債務は消滅していたことになり、解除は効力を失う。解除の当時は反対債権の存在を知らなかったために、相殺の時期を失したにすぎない。
- 賃貸人の解除権の行使は権利の濫用である。
- 原審(名古屋高裁)は賃借人側の主張を退けた。賃借人側が上告した。
争点
- 相殺の遡及効(民法506条2項)は、相殺の意思表示より前に有効にされた契約解除(民法541条)の効力に影響するか
- 解除当時、賃借人が反対債権の存在を知らず相殺の時期を失した場合でも、同様に解されるか
- 賃料不払を理由とする解除権の行使が権利濫用にあたるか
判旨
上告棄却。
- 規範:相殺の意思表示は、双方の債務が相殺に適するようになった始めに遡って効力を生ずる(民法506条2項)。しかし、この遡及効は相殺される債権債務それ自体についてのものにとどまる。相殺の意思表示より前に既に有効にされた契約解除の効力には、何らの影響も与えない。
- 主観的事情は無関係:自働債権者が反対債権を有していることを知らなかったために相殺の時期を失した場合でも、結論は変わらない。
- 結論:賃料不払により適法に解除された以上、その後の相殺によって賃料債務が遡って消滅しても、解除の効力は維持される。
- 権利濫用:原審の認定した事実関係の下では、本件解除権の行使は権利の濫用にあたらない。
判決文から
「この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。」
遡及効の及ぶ範囲を債権債務自体に限定した核心部分
「この事は相殺の自働債権者がその債権を有しておることを知らなかつたため相殺の時期を失した場合と雖も右の理を異にするものとは解せられない」
反対債権を知らなかったという事情でも結論は変わらない
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
