SaySayLaw

最大判昭和32年11月27日

両罰規定は事業主の選任・監督上の過失を推定した規定であり、注意を尽くしたことを証明しない限り事業主も処罰されるとした

刑法罪刑法定主義行政上の強制手段過失本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法H23・司法H25・予備H25

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和26(れ)1452 入場税法違反
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第11巻12号3113頁
参照法条
旧地方税法(昭和23年法律110号)151条3項,旧入場税法(昭和22年法律142号による改正前のもの)16条,旧入場税法(昭和22年法律142号による改正前のもの)17条ノ3,刑法6条,憲法14条,憲法39条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 法律「廃止前になしたる行為に関する罰則の適用については、なお、従前の令による」との規定の趣旨 二 同種の犯行について、その行為の時期により刑罰規定を異にすることと憲法第一四条 三 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定の法意 四 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定と憲法第三九条

裁判要旨

一 地方税法(昭和二三年法律第一一〇号)第一五一条第三項の「入場税法の廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」との規定は、従前の行為に関する限り、旧入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)の刑罰規定については何等変更なきことを規定したものと解すべきである。 二 同種の犯行についてその行為の時期によつて刑罰規定に差異を設けても憲法第一四条に違反しない。 三 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定は、事業主たる「人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者」が入場税を逋脱しまたは逋脱せんとした行為に対し、事業主として右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、したがつて事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業者もまた刑責を免れないとする法意である。 四 入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)第一七条ノ三のいわゆる両罰規定については、憲法第三九条違反の問題を生じない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は事業主であり、その代理人・使用人などの従業者(判示行為者ら)が入場税を逋脱した。原審は、旧入場税法(昭和22年法律142号による改正前のもの)17条ノ3のいわゆる両罰規定を適用して、被告人を同法16条1項の罰則で処断した。

旧入場税法はその後廃止され、地方税法(昭和23年法律110号)に移行した。新法136条の法定刑は旧入場税法16条1項より軽い。ただし地方税法151条3項は、「入場税法の廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」と定めていた。

弁護人は上告し、次のように主張した。

  • 経過規定は廃止前の行為をなお処罰する旨を定めたにすぎない。刑法6条により軽い新法で処断すべきであり、重い旧法を適用するのは憲法14条に違反する。
  • 両罰規定は、故意も過失もない事業主に他人の行為の刑責を負わせるもので、憲法39条に違反する。
  • 憲法31条違反。行為者らは横領目的で逋脱したのであり、業務関連性に影響する。

争点

  • 「なお、従前の例による」との経過規定がある場合に刑法6条が適用されるか
  • 行為の時期により刑罰規定に差異を設けることが憲法14条に反するか
  • 両罰規定による事業主処罰の法的性質(無過失責任か過失責任か)
  • 両罰規定が憲法39条に反するか

判旨

上告棄却。

経過規定と刑法6条

  • 刑法6条は、犯罪後の法律により刑の変更がなされた場合に適用される規定である。
  • 「廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」との経過規定を設けた場合、従前の行為に関する限り刑罰規定に変更はない。したがって刑法6条の適用の余地はない。
  • 同種の犯行について行為の時期により刑罰規定に差異を設けても、立法政策の問題であり、憲法14条に反しない。

両罰規定の性質

  • 両罰規定は、従業者が違反行為をした場合に、事業主が行為者らの選任・監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失の存在を推定した規定である。
  • 事業主が注意を尽くしたことの証明がなされない限り、事業主も刑責を免れない。
  • 故意・過失のない事業主に他人の行為の責任を負わせたものだとする違憲論(憲法39条)は、その前提を欠く。

行為者の目的と業務関連性

  • 行為者らが横領目的で逋脱行為をしたとしても、その具体的目的は「業務ニ関シ……違反行為ヲ為シタルトキ」の要件に影響しない。

判決文から

「事業主として右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく」

両罰規定=過失推定説の核心部分

「事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れ得ないとする注意と解するを相当とする」

反証による免責の余地(立証責任の転換)

「従前の行為に関する限り刑罰規定については何等の変更を見ないのであるから刑法六条はその適用の余地がないものといわなければならない」

経過規定がある場合の刑法6条の不適用

「同種の犯行についてその行為の時期によつて刑罰規定に差異を設けても、それは立法政策の問題であつて憲法一四条のいわゆる法の下における平等の規定に反するものでないことはいうまでもない」

時期による刑の差異と平等原則

「その具体的目的の如何の如きは、本件両罰規定にいわゆる「業務ニ関シ……違反行為ヲ為シタルトキ」とある要件に少しの影響をも及ぼすものとは解せられない」

行為者の私的目的は業務関連性を否定しない

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。