最判昭和32年10月4日
起案担当の補助公務員が情を知らない作成権限者に虚偽公文書を作らせた場合、虚偽公文書作成罪(156条)の間接正犯が成立する。
出題:司法H28・司法R3・司法R5・予備R3・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和29(あ)3851 虚偽公文書作成行使詐欺、収賄
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第11巻10号2464頁
- 参照法条
- 刑法156条,刑法155条,刑法157条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
補助者たる公務員が情を知らない上司を利用して虚偽の公文書を作成した場合の罪責
裁判要旨
作成権限者たる公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が、行使の目的で内容虚偽の公文書を起案し、情を知らない右上司を利用してこれを完成した場合は、虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
解説
事案
被告人は、宮城県栗原地方事務所の建築係として、所長Aの下で職務に就いていた。担当は、建築申請書類の審査、建築物の現場審査、住宅金融公庫の融資で建てられる住宅の建築設計審査・建築進行状況の審査、およびこれらに関する文書の起案である。
被告人はその地位を利用し、行使の目的で、まだ着工していないBの住宅の現場審査申請書に虚偽の報告を記載した。内容は「建前が完了した」「屋根葺・荒壁が完了した」というものである。被告人はこれを、現場審査合格書の作成権限者である所長に提出した。情を知らない所長は、記載どおり建築が進んだと誤信して記名・捺印し、内容虚偽の現場審査合格書が作られた。被告人は、この合格書を関係官庁と銀行に提出して行使した。
第一審は、作成行為を刑法156条、提出行使を158条の罪と認定し、原審もこれを是認した。弁護人は、非公務員の虚偽申立ての事案に関する最高裁判例を引いて上告した。
争点
- 作成権限のない補助公務員が、情を知らない作成権限者を利用して内容虚偽の公文書を作らせた場合、身分犯である虚偽公文書作成罪(刑法156条)の間接正犯が成立するか
- 公務員でない者が虚偽の申立てにより情を知らない公務員に虚偽文書を作らせた場合の判例との区別
判旨
上告棄却(156条の虚偽公文書作成罪と158条の同行使罪の成立を認めた原判決を是認)。
規範:156条の罪は、公文書の作成権限者である公務員を主体とする身分犯である。それでも、次の場合には虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
- 作成権限者の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、
- その地位を利用し、行使の目的で、
- 職務上起案を担当する文書について内容虚偽のものを起案し、
- 情を知らない上司に提出して、内容を真実と誤信させて署名・記名・捺印させ、
- 内容虚偽の公文書を作らせたとき。
本件被告人の所為はこれに当たる。
判決文から
「刑法一五六条の虚偽公文書作成罪は、公文書の作成権限者たる公務員を主体とする身分犯ではあるが」
156条が身分犯であることを前提にしている点
「作成権限者たる公務員の職務を補佐して公文書の起案を担当する職員が、その地位を利用し行使の目的をもつてその職務上起案を担当する文書につき内容虚偽のものを起案し」
間接正犯を肯定する主体・行為の要件
「右職員は、その職務に関し内容虚偽の文書を起案し情を知らない作成権限者たる公務員を利用して虚偽の公文書を完成したものとみるを相当とするからである」
間接正犯を肯定する理由づけの核心
「所論引用の当裁判所の判例は、公務員でない者が虚偽の申立をなし情を知らない公務員をして虚偽の文書を作らせた事案に関するものであつて、本件に適切でない。」
非公務員の虚偽申立て事案との区別
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
